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「桜、綺麗だね」
丁度、今は春。裏庭には一本の大きな桜が立っていた。俺よりも背丈が頭一個分程大きい彼の髪には桜の花弁が数枚くっついていた。
「ぶるーく、屈んで」
「…ん」
ぶるーくを屈ませると、付いていた花弁らを一枚一枚取っていく。合計でついていたのは6枚。悪魔の数字でもあり、俺を除いたW国幹部の人数でもある。なんだか怖い様な、虚しい様な。
ちょっと感傷に浸っていると、いつの間にか立っていたぶるーくの手が降りてくる。数日前のスマイルさんの様であり、彼流の少し違う髪の解き方。
「…なかむは幸せそうでいいなぁ」
「ううん、そんなでもない、かな。ただただいい事と悪い事の積み重ねでいい事が偶々Aの目に入る時起きたとか、そういう」
「…そっか」
そうぶるーくは言うと、俺がした様に俺の髪から桜の花弁を取る。ふっ、と吹けば風に流れひらひらと舞い、何処かへと飛んでいく。
「なんか、運命みたいだよね。花弁って。」
何かを例えているのか、ぶるーくはそう何処かに呟いていた。
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桜を見た翌日、早朝から俺はAに呼ばれ彼女の自室へと向かった。廊下を歩いていると走り回るぶるーくとそれを追いかけるきりやんがいた。ぶるーくが仕事サボったんだろうなぁ、なんて。
Aの部屋に着けば扉を2回ノックする。中からどうぞ、と声がしたので扉を開け部屋に入る。Aの部屋には本棚が壁一面に広がり、本の背面は全て難しそうな文字で埋まっていた。彼女はと言うとデスクに腰掛け、俺をじっと見つめていた。
「要件は何でしょ、う…!?」
急に顔が近くなったと思えば、彼女は俺の頬にキスをする。話していた言葉が詰まり、その後にも驚きの声が漏れ出す。
「…聞いてほしいことがある」
そう言ったAの顔は少し暗かった。
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作者名:単柴 | 作成日時:2020年6月27日 18時