#15 ページ18
そこそこ楽しくぶるーくと話を進めていれば、外からはゆっくりぽつぽつと雨が降り始める。何故か、こんなにも話すのは楽しいのに雨は冷たいんだろうな、なんて考えがよぎった。
雨が降り始めてからしばらくして、扉が開く。
そこから顔を出したのは黒スーツに紫のネクタイとベスト、胸元に金色のブローチをつけそこからは白と紫のアクセサリーが垂れていた。たしかこの人はスマイル、という幹部。…何処かで見たことがある様な…いや、情報収集の時写真を目にしたからかもしれない。きっとそうだ。
スマイルさんはぶるーくと席を変わると俺に話しかけて………はこなかった。持ってきたと思われる本をずっと読んでいる。
こんな俺が目の前にいるのに、何も警戒もしていないこの人に興味が湧いた。
「あの…スマイル、さん」
「……」
スマイルさんは口を開こうとしなかった。俺の努力虚しく耳も傾けていない様で。
先ほどよりも少し声を大きくしてもう一度呼ぶ。
「…スマイルさん！」
「ん、何」
やっとスマイルさんは俺を気にかけた。とは言っても目線は本のまま。話すと言えど、気まずいというか、話題がないというか。なんとか話を持ちかけようと俺は頭をフル回転させる。
すると俺の頭には弓道場にいたスマイルさん似の兵の顔がよぎった。なんとも名案じゃないか！すごく指を鳴らしたい気分になる。
「あの、スマイルさんって兄弟いますか？」
「…居ない」
意外な言葉が返ってきた。…ということは、あれは本物のスマイルさんだったのかもしれない。やばい行動してないかな、えっ大丈夫だったよね？なんて独り言をぶつぶつと呟いた。
「そんな緊張しなくても大丈夫だから、さ」
スマイルさんが俺の頭に手を差し伸べわしゃわしゃ、と髪を解く。上を見上げると優しそうな笑顔をしたスマイルさん。やっぱりこの人絶対兄弟いるよな、と思いながら、ありがとうございますと表情を緩め返すとそろそろ時間なのか彼は出て行った。
そして、何故だか彼はタメ呼びし難い雰囲気を感じた。
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作者名：単柴 | 作成日時：2020年6月27日 18時
