004:コイに堕ちる ページ5
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「おーーい、Aちゃーーん!」
私を呼ぶ治くんの声で、我に返る。
瞳の奥にある闇まで見透かされそうな、表面を覆っている穏やかな膜を貫くような、まっすぐな目。魔法にかけられたようにその人を見つめかえしていた私を救ったのは治くんだ。
片付けが終わったらしいお兄ちゃんたちは、
我先にとこちらへ走ってくる。
勝者、治くん。くっそサム、と零す侑くん。
<<<宮侑顔は良いけど口悪し>>>
うわ、完璧な語呂合わせ。
「なんや双子、知り合いか?」
私を見上げる位置に立っているその人がお兄ちゃんたちに声をかけた。
「はい北さん!俺らのいとこで今年の一年です。な、A?」
「一年の篠原Aです。いつも二人がお世話になっています」
そう挨拶すると、『北さん』と呼ばれたその人は、
「男子バレー部主将の北信介いいます。こちらこそ、お世話になっとります」
私に深く深くお辞儀をした。
丁寧な人。
「Aちゃん、もう暗いし一緒帰ろ」
治くんが上にいる私に声をかける。
すると、侑くんがものすごい勢いで治くんを睨んだ。
「おいサム抜け駆けすんなや。Aは俺と一緒に帰るんぞ」
二人の取っ組み合いは、ちょっと面白い。
日によって攻めか受けが変わるから。
でも部活の片づけ中に、
こんなに二人の世界に突入していていいんだろうか。
「侑、治。篠原さん困ってはるやろ。はよ着替え行き」
そんな私の思いが表情に出ていたのか北先輩が静かな声で二人をそう諭す。
おぐっ、はひっ、とお兄ちゃんたちは何とも
奇妙な声を上げて体育館を出て行った。
この先輩、読めない。
そう、それはまるでひみつの〇ッコちゃんのような…()
「篠原さんも体育館の前で待っとき」
頬にかかった銀色の髪を慣れた手つきで、耳にかける北先輩。
こっちに振り返るその姿は初対面ながら、ほんとに画になる。
そんな不純な思いを抱えていた私は、
「はァいっ!」
噛んだ。
……親戚のDNAだな。不可抗力不可抗力。
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パルム(プロフ) - らさん» コメントありがとうございます!確かにそうだな、と考えなおしました。北さんに二度目の好きを洩らした後のヒロインと北さんの展開はご想像していただけると幸いです。これからもっとその人物に寄りそう素敵な小説が書けるように努めさせていただきます。 (2021年8月9日 19時) (レス) id: 7103dc21f5 (このIDを非表示/違反報告)
ら - んー、2回もヒロインに告白させるのは北さんぽくないなぁ、、、せめて2回目は北さんからの方が綺麗なお話になっただろうに少し残念です。 (2021年8月9日 9時) (レス) id: c2c5a94e17 (このIDを非表示/違反報告)
パルム(プロフ) - 、さん» 教えてくださってありがとうございます!私自身もともと機械などに疎いのですが、うらつくが好きなので投稿させてもらっている次第でした。自分なりに調べてみて、今は外したことになっています。正直すごく不安なので、教えてくださると幸いです。 (2020年8月16日 6時) (レス) id: 7103dc21f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パルム | 作成日時:2020年8月16日 0時