彼女はもともとⅢ (ページ43)

今日:5 hit、昨日:13 hit、合計:14,243 hit

あなたをページ43

部屋に送り届けた後、扉に全体重を預けてずるずるとしゃがみ込んでしまった。

一体、イライ・クラークはこんな嫉妬深くて無鉄砲に襲う人だっただろうか。

否、そういう人じゃないのは自分自身がよく知っている。

が、

ではどうしたのだろうか。

(嫉妬、してたのか？)

よくわからない。

彼女の幸せそうな顔を見るだけと、あの時、突入したときに決めたじゃないか。

期待はしないと。
そう願ったじゃないか。

エマさんやフィオナのように愛と慈しみを持って家族愛を与えると決めたじゃないか。

それなのに

ナワーブのあの距離の近さが
彼女の柔らかな肌に触れられるウィリアム君に
何とも言得ない感情を抱いたのだ。

ドロリと黒いモヤのような感情を

彼らは彼女を家族愛として愛を与えていて、それ以上もそれ以下もないはずなのに。

天眼だって、彼女の幸せを示しているのに

そこに立っているのが僕じゃないだけでとても嫌だ。

彼女に愛されたいと

有償の愛を求めてしまった。
彼女は一番それを嫌うのに
恐れてしまうのに

「ははっ…」

乾いた笑いは部屋の空気を割るように響く

自分は最低な事をしてしまった。

反省する気持ちはあるのに不思議と後悔はしてなかった。

「これは、僕の責任で僕の欲で、僕の罪だ。」

何も悪くない。彼女は何も。

それが、僕の心を乱そうとも、それは僕の欲で僕の罪である。
でも、そのアイマスクの下はびしょびしょに濡れていて彼女もきっと気がついただろう

「僕はAが思ってるよりとても醜い紳士のようだ。」

彼女の熱が、吐息が、柔らかな唇が
崩れないようにしっかりと弱々しくも服をつかんでいた手が
林檎のように赤い頬が
とろけきった潤んだ目が
肌の柔らかさが、甘い優しい匂いが

「…」

ベッドへ入ると着替えもすることなく静かに目を閉じた

彼女を汚してしまう嫌悪感とそれでも止まらない昂ぶる気持ちと快楽と

(ごめん。A…)

どれだけ自分が最低だったか
この短時間で再認識した気がした。

フクロウが無様であられもない姿のぼくをみている。

(あぁ、おまえだけは)
どうか僕をずっと蔑んだ目で見ていてくれ。

あの柔らかさは夢じゃない。
あの罪は夢じゃないと

唇をなぞった