彼女はもともとⅢ (ページ35)

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隠れていなくても探しに行くよ。ページ35

「19歳のA、こんにちわ。」

誕生日の特別な日課もないため誕生日はまだ来てない。
19歳にこちらに来るといっていたから、今まで接していたのは19歳のA

生れてまだ20にもならない子が、こんな過酷な人生歩んでるとか、人生は世も末だ。

目の前の彼女はうっすら目を開けて、虚ろな瞳でこちらを見ていたが、しばらくすると催眠と意識の間にいるのかぼーっとしていた。

『ここは…』

見つかったのね。といつもの覇気がない彼女は何かを恐れているようだった。

「怖い思いをしたね。辛かったね、悲しかったね。目の前で自分の愛したものが死んでいくなんて」

『わかってるなら、何で呼んだの…』

ほおっておいてよ。恨めしそうに僕の声に反応する彼女
小さくから大きくなっていく。そのまま彼女の深層心理に迫っていく。

失敗したら取り返しのつかないことになるだろう。
だけど、失敗しない自信しかなかった

「君を待ち望んでいる人が居るんだよ。」

『そうやってまた私を縛るの?』
「違うさ、それは本当だよ。
君を愛してやまない人がみんなが、君を待っている。」

微笑んでしまう僕と恨めし添えな声のA

『愛さないで。縛らないで、痛いことしないで。嫌いきらい！愛なんて大嫌い!』

「そんなの知ったことか。歪でも愛だ。
ナワーブに連れられたときに既に愛されることが。大切にされることが心地良いと思っていた」

違う?
問いかけると彼女は黙り込む。

『それでも、私は愛されてはいけない。
私は…許されてはいけない
捨ててもこの身に積み重なる罪の重さが辛い。』

愛を認めた今こそ、彼女の帰り道を提示することができる。

「たしかにここは歪だ。でも君があの家で得られなかった本当の愛を教えることを誓うよ。」

だから

「…帰っておいで、A」

「19歳のA、ここに帰っておいで、僕達に顔を見せておくれよ」

『や…やだ！私…私は!!』

パチン

手を叩くと彼女はがくんと腕を下ろした。

「……帰ってくる筈さ。彼女が。」

あぁ、ほんとうに

可愛そうだなぁ。とても愛おしい。
泣いてる顔が可愛いなんてそうそういないのではないだろうか。