【実ｼ兄者】彼は地獄を蹂躙す【ωrωrd!】 (ページ41)

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退学願いページ41

偶々足が図書室の方に向いて
偶々手が背表紙をなぞって
偶々目が外の紅い蝶に向いていて
偶々指が軍神記に止まって
偶々脳があの人の名前を思い出して
偶々気が向いたから、その本を手に取った

そう、全ては偶々だったのだ。
偶然。

士官学校には図書室、と言うのも一応は存在している。ただここ最近は埃が舞って居たのだが。

そんな場所を嬉々として掃除して知識の宝庫として重宝していた。

軍神記には素晴らしい記録が残っていた。その最後のページへ目線を落とすと作者のことが書かれており、どんな人間だったのかが理解できる。

更に奥に進む

『クラレという人間の著書は規制ばかりでつまらん』

よほど国にとって不利な情報があると見た。

そこではた、と気がつく。

(ここは科学コーナーか。)

再び軍記コーナーに戻ると棚の一番下に卒業生のコーナーがある。

背表紙がしっかりしていて、最近卒業したようだ。

『…トム、アリシーム、ラルジ…ベン』

ふと、あの人のことを思い出す。

そして頭を振った

(ゾムも、ぺいんとも、母上だってあれは役だって
そう言ってたし…)

私は殺してない。だって周りがそう言っていただから私は気にしない。

それなのに手はその本の背表紙に向いた

手に取ると少しずっしりとしている。
少々はしたないが床に座り込んでページをめくる。

一日日記と家族に向けて一言。
隅に小さく小言が書いてあり、その上からたくさんの線で小言を隠すように塗りつぶしていた。

(なんだ、卒業生だからどうだってのは無いわ。)

ふと、手が止まった

『な…懐かしい…！』

10の誕生パーティーは広場で行われ、オスマンが私のために書籍の贈呈をしてくれた。

後にはプークス団
そして、私の側で使えるベンの姿。

次のページには家族写真と言えるのかは疑問だが、ベンに横抱きにされた私がぼーっと別の方に視線を向けている写真もある。

自分の直筆の手紙も添付されていた。

『…なんか、恥ずかしいから』

見なかったことに…と偶然開いたページ

最近の日記らしい

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上官から言われた昇格の件、あれは罠だった
この国はただでは済まされなかった
有能を犯罪者扱い

ただ、退学もおすすめしない。

１度目を付けられれば生きていくことは不可能だ

この学校に入隊したなら、爪を隠して過ごさなければ

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血の気が引いた。

扉の開く音にびっくりしてポケットに落ちてきた退学願いを突っ込んで影に身を潜めた