【歌い手】3人4脚は難しい。

にじゅういち ページ22

「でも、ごめん。事務所に聞いてみてもいい？」


「あ、どうぞ！！廊下出ていいよー」


事務所に聞いたところで、答えは見えている。私になど興味が無い事務所は適当にしてくれと私を虫けら同様、手をひらひらさせて追っ払うのだ。


でも報告はしないといけないし、仮にも私は芸能人。マネージャーさんにはプライペートの予定以外伝えなければならないという決まりがある。まぁ伝えると言ってもスケジュールを組み立てているのはマネージャーさんだから言うも何もないんだけれども。


「あ、もしもし。マネージャーさん？」


「はーい？どうしたの？」


ちなみに、このマネージャーさんも私を認めてくれている数少ない人。私に一切興味が無い事務所とは違い、ぱすからーの中でも特にマネージャーさんは私を甘やかしてくれる。まぁそれがたまに迷惑な時もあるけど、マネージャーさんの明るさや天然さがあったからここまでやってくれたと言っても過言ではない。


「天月さんのライブにキーボード担当で出演してもいいですか？」


「あら、いいじゃない！！ファイナル公演で出演させて頂くのかしら？」


「はい」


「分かったわ！社長には私から話しておくからAは天月さんの方の練習に集中して！ぱすからーの方はしばらく休むって言っておくわ」


「ありがとうございます、マネージャーさん」


「ふふ、いいのよ。それじゃあ頑張ってね」


そう言ってプツ、と電話が切れた。


部屋に戻ると、ソワソワしながら待っていた天月さんがこちらに気づいて慌てて駆け寄り、__どうだった！？__と聞いてきた。距離が近いからとりあえず離れ、__OK出たから大丈夫__と言うと、ホッとした様子で__良かったぁ…__と呟いた。


そして__バンドメンバーにキーボード見つかったって連絡するね！__と携帯を取り出し、ウキウキしながら文字を打ち始めた天月さんを見て、今回の件を引き受けて良かったかもと少しだけ思った。

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