同じクラスの塩レモン【縁下力】 (ページ6)

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第5話『自覚症状』ページ6

「ところでAちゃんは、好きな人いるの？」

移動教室の帰り、耳に飛び込んできたのはクラスの女子のそんな声。

聞きたくない、耳を塞いでしまいたい、そんな気持ちと一方で、こっそり耳を傾けている自分がいた。

Aさんに好きな人なんていなければいいのになって思った。
が、そんな願いを打ち消すかのように

｢えっ！誰だれ？！｣

やっぱりいるのか…まあそうだよな、普通好きな奴くらい誰だっているし、当然のことだ。それがクラスのアイドルだろうと。

Aさんは美人だし、優しいし、人気者だから、きっとAさんの好きなやつもすぐAさんのこと好きになるんだろうな。

＿＿＿Aさんの好きな奴、他に好きな子がいればいいのに、

「ん？なんか言った？」

「あぁ成田、なんでもない」

クラスメイトの失恋を願うなんて、俺サイテーかな。

でも、Aさんには誰かのものになって欲しくないって気持ちが俺の中に確実にあって、

それが彼女がクラスのアイドルだからって理由だけじゃないのも、自分で分かってはいるんだ。