ダメ女と女子力男子【灰】

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『嘘でしょ、』


22時を過ぎた頃、私は自分の部屋の前で立ち竦んでいた。




高校卒業と同時にスカウトされ、読者モデルとして働き始めた。




今日は打ち合わせで東京の事務所まで行って、撮影をして、愛知まで帰ってきて、というなんともハードな１日だった。



今すぐにでもお風呂に入ってベッドに滑り込みたいくらいヘトヘトなのに、




『家の鍵、事務所に忘れてきた……』




やってしまった。これはまじでやらかした。



今から東京に戻ることはまず不可能。東京に戻ったとしても愛知に帰ってくるのは明日の朝か昼前になってしまう。……こんな時間だから管理会社にも電話は繋がらないし。




あと私には友達が居ない。だから一泊泊めてよー！なんて言える子も存在しないのだ。




はあ……満喫とかに泊まるしかないか。



今日は立ちっぱなしでもう脚が棒だ。タクシーを呼ぼうとスマホを取り出してタクシー会社に連絡するが、中々電話に出てもらえない。華金だもんなーーー。




何度目になるか分からないため息を吐いてから、自分の部屋の扉の前に腰を下ろした。今日はここで野宿？…最近隣の家に誰か引っ越してきたところなんだけど、ここで会ったらやばい奴だと思われちゃうじゃん。




あー、終わった。全て終わったわ。つら。





肩を落としてるとスマホの画面が光り、メッセージが入ってきた。




《Aちゃん今何してるー？》





ゲーム仲間のしるこさんからだった。




《じらちゃんとかるてっとさんと通話してるんだけど、一緒に話さない？？》




しるこさんはオンラインゲームで知り合った人で、私のゲーム仲間の中では一番長い付き合い。


そのしるこさんのさらに友達のじらいちゃんとかるてっとさんは最近繋がった。よくゲームをしたり、話したりして、最近はほぼ毎日連絡を取り合うくらい仲がいい。



今日も話してるんだ。……本来だったら暖かい部屋の中でゆっくり話せたのに……数時間前事務所の机に鍵を置いた愚かな自分を呪いたい。



そんなことを思いながらもこのどんよりした気持ちを晴らしてもらおうと私はすぐに《いいよ》と返信した。

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