最適解が分からない【wrwrd】

32つ目の解答 ページ35

Aサイド

渡された時の重量、トリガーを引くスピード、それらの条件を全て合算し弾き出した僕の制限時間


敵は先ほどに比べればかなりの人数が減っている
しかし、こちらが劣勢なのは変わっていない


むしろ、状況は悪化しているとも言えた
僕だけの力では、まともに動けない味方を全員助けるなんて神がかったことはできない
相手側のリーダーはそれなりに頭が回るのか、途中で攻め方の方針を変えてきた


始めは、こちらの戦力をじりじりと削り
戦力的にも、精神的にも大きな圧迫をかけるような攻め方をしていたのに対し、
今は鬱を庇ってまともに場所を移動することができない僕を集中的に狙ってきている


ここで、銃を手放した場合
僕らに勝ち目は、無い


圧倒的不利状況


これに立ち会った時、人は大きく言って二つの行動に分かれると思う


一つ目―――諦める
諦めて、その結果を受け入れる
つまり、負けを認めるということだ


二つ目―――抗う
あらゆる理不尽に抗い
希望を掴むまで、決して諦めない


人は、いつも“勝者”でいることは出来ないが、“勇者”であり続けることは出来るのだ


ならば、


僕は“勇者”になろう


トリガーを引く手を休めないまま、少し、足を下げる
そうすれば、コツン、とブーツの踵越しに何か硬い物があたる感触がした


――――――ビンゴ


そしてそのまま
思い切り、踵でその硬い物を蹴り上げた






その場に居合わせた誰もが瞠目した


彼女が異様な速さをもってしてこの戦場に駆けつけたその時以上の驚愕を敵、味方問わずして共有していた





彼女が行った業に名前を付けるとするならば……空中リロード
蹴り上げたのは鬱が吹き飛ばされた時の衝撃で彼の腰のベルトから外れて地に転がっていたマガジン
宙に舞ったマガジンを先に球切れを起こした右の銃に挿入する


そこまではいい
問題は……その一連の動作をマガジンが空中にある状態で行ったということだ
数ミリの違いすら許されないその行為を彼女は少しの時間差をいれて右と左、二つの銃どちらにも行った


偶然なんかじゃない
人並み外れたAの身体能力、反射神経、そして極限まで引き延ばされた集中力と元来の桁違いの情報処理能力をもってして成しえる神の御業


それを彼女はいとも簡単に成功させた

33つ目の解答→←31つ目の解答

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す