21.イチゴ ページ21
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食事も片付けて一息つくと、雅紀くんがキッチンに向かったから私は1人でテレビを見てた。
テレビでは、高校生が好みそうな恋愛ドラマがやってて
青春の影が、どこか懐かしいような悲しいような気持ちにさせた。
｢じゃじゃーーん！｣
突然、背後から声が聞こえたから振り返ると
そこには大きなホールケーキを持つ雅紀くんが居た。
｢な、なにそれ！どうしたの？｣
｢付き合った記念日！！ケーキ屋さん行って買ってきちゃった(笑)｣
雅紀くんは、嬉しそうにそれを机の上に置いて
てっぺんに乗ってるイチゴをとって私の口元に近づけた。
｢はい。あーーん。｣
｢え、･･･恥ずかしい･･･からいいっ｣
｢えー、なんでよー(笑)じゃあ俺食っちゃうよ？｣
って言って、パクッて食べちゃって
思わず、あっ･･･って声が漏れた。
｢はべはかっはんひゃん(食べたかったんじゃん)｣
｢･･････｣
｢あげるよ？｣
そう言って、雅紀くんの唇が近づいて私と重なる。
口を割って入ってきたのは甘い果実で･･･生暖かいイチゴがちょっぴり酸っぱさを引き連れる。
イチゴの果汁なのか、お互いの唾液なのか
口を割って入ってきて、空いた隙間から顎を伝ってこぼれ落ちる雫。
なんだか恥ずかしくて、視線を下に落として
口の中のイチゴを、もきゅもきゅとできるだけ小さく口を動かして咀嚼する。
｢美味しい？｣
｢ん･･･、ちょっと、、あったかいけど、｣
｢雅紀くん味。(笑)｣
｢それ、ちょっとえっち｣
｢男はこんなもんだって(笑)｣
って言って、一緒に持ってきたナイフでケーキを半分に割る。
｢･･･付き合えなかったらどうしてたの？このケーキ･･･｣
｢んー、付き合えるって自信あったから、買ってきた(笑)｣
｢どういうこと？｣
｢野生の勘かな？｣
って言って、ケーキの1欠片をお皿に盛って置いてくれた。
｢ずっと一緒に居たいね･･･俺たち｣
｢ん･･･｣
雅紀くんは、自分のケーキを切りながらそう言って
その言葉が、今直ぐにでは無理でも近い将来現実になることを祈った。
｢この余ったケーキどうするの･･･？｣
｢んー？･･･もう1人呼んでるの(笑)｣
｢もう1人？｣
｢仕事入ってたみたいでさー、このタイミングになっちゃったけど(笑)さっき向かってるって言ってたから多分、もうじき来るよ｣
って言うのと、チャイムが鳴ったのは同時だった。
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作者名：にゃん | 作成日時：2017年11月29日 0時
