OVER, advance #3 (ページ5)

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●一緒/情緒ページ5

「……何か言えよ」
「ぇっ、あ、わたっ、」
「あーやっぱいい。何も言うな」
「……え？」

ストンと、ソファーから体が落ちる音がした。

彼はそのまま床に膝をついて降りていて。

「お前は口開くと変なこと言いそうだから……いいわ、頷くかそうじゃないかでいいから……ちゃんと答えて？」
「っ、」

腕が私のほうに伸びてきて……

あぁ、触れたい。

そう思うよりもきっと先に、私はその温もりを手に入れた。

「こうしてると、ドキドキする？」

ドキドキ？するに決まってる。だってこんなの……

言われなくてもとても喋れない。
だから小さく頷いたら……「そっか」って甘い声で……もっと強く抱きしめられた。

「甘いもん、好きだよな？」
「あ、この間いただいた、」
「いいから」

どうして喋ってはいけないの？

彼が私の頭を押さえて、ぎゅっと胸に寄せるから……もう、頷くことも出来ない。

「俺と一緒に食ってくれる？ケーキ」
「……うん」
「食い終わったら……一緒に寝てくれる？」
「……ん」

相変わらず、頭がついていかない。
私は返事だけを繰り返して……

「何もしないから、ただ、」
「えっ？」

そこで、思わず声を上げていた。
あ、駄目だったかな……そう思った時には私の頭に添えていた手が無くなっていて。
今度は頬を両手で挟まれて……ジッと見られていた。

「反応し過ぎ」
「だっ……て、」
「今日は何もしない。だから変なことしてくんなよ」
「……はい」

威圧的にそう言われて、素直に答えるしかなかった。

そして、少しだけ睨んでいるようだった瞳の力はすぐにフワッと軽くなって。

「始めからやり直しだな。あぁ、それなら本当に……この前からだな……」

ブツブツと小声で何か言い出したと思えば、またジッと見られていた。

「A。一緒に居よう」
「……」
「……ちょ、なんか答えろよ」
「一緒……って？何が……」
「ハァ？一緒は一緒だろ？一緒に……なんだ？飯食ったり、テレビ観たり、じゃねーな……まぁそれもあるけど……あーもう！一緒は一緒なの！」

それはつまり。私が思う“一緒”と同じ意味で良いの……？

彼が照れたように誤魔化している気がして。
気のせいじゃありませんようにと思いながら、私は恐る恐る答えた。

「はい。一緒に……」
「ったく。おせーんだよ」
「ひゃっ」

何が起きているんだろう。

ドキドキを通り越して……彼の鼓動まで聞こえる距離に、心臓が痛くなってきた。