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彼は、決して交わるはずの無かった人……
こんなモデルルームのようなお部屋を目の前にしたら、考えずには居られなかった。
「ハッキリ言っていただければ結構ですから」
「え？」
「言い訳だけど！普段はもうすこーしはマシなんだって。たまたまちょっとね、片付ける暇が無くて、」
それなのにお部屋が片付いていないと、そこばかり気にしている彼が可愛らしく思えて。
普通の感覚を持っているんだな、というか……そう思うのは、失礼かな？
「あ、お茶いただきます。ありがとう。……大丈夫よ？座れるし」
「うわ、判断レベルが低い！」
「あははっ。でも……難しそうな資料がいっぱい」
「あーまぁ色々、ね。勉強したいこともあって……あーマジで汚ねぇな、もー……」
「待って？本当に、大丈夫だから」
まだ片付けようとする彼の手に、咄嗟に触れて止めていた。
そんな事をするくらいなら、少しでもそばに……こんな広いお部屋で、おいてきぼりにしないで……。
「……弁当。食おっかな」
「うん」
片付けを止めた彼の甘めの声に、つい弾んだ返事をしていた。
隣に座られて、ソファーがその分沈む感覚が、なんだか嬉しくて。
もっと、くっつきたい……なんて事まで考えたけれど。
突然そんな行動をとったら驚かれるよね？お食事の邪魔にもなるし……
「これ。美味い。美味いんだけど……ね、」
「合わなかった？」
「いーや？ただ……もっと美味くなる可能性があって」
「うん？」
「あー」
「……え？」
味の好みの話だと思ったの。
それなのに、彼は大きく口を開けて、そこに向かってお弁当と交互に指をさしたから……
何もする前から、私はカァッと顔が熱くなってしまった。
「……するの？」
「あー。あーああー」
「ん、ふふ。ちょっと待ってね」
「あああー」
早くと言われたんだと分かって、可笑しいのか嬉しいのか笑いが止まらない。
震える手でようやく箸を彼の口に運ぶと、パクンと勢いよく食い付かれて。
それを見ていたら、ますます笑いが抑えられなかった。
「……うっめぇ」
「ふ、あははっ！やだ……子供みたい」
「はぁっ？バカにしてんの？」
「してないしてない！ただ、……可愛いなぁって」
「ぜってぇバカにしてんだろっ。じゃあお前も食え！ほれ、あーん！」
「きゃ、やーだ！ちょ、あはははっ！」
……こんなにも、笑った日はいつぶりだろう？
思い出すことも出来ないの。
私は、それほど……涙が滲むくらいに、笑い転げた。
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作者名：みつな
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月14日 22時
