La ｆｉｎｅ14 ページ14
【ザンザス、おいで―――】
……さっきから何なんだ。昔の記憶など今更………。
【ザンザス―――】
………名前など、呼ばれたことが一度もなかった。だからあの時、"あの女"が初めて俺の名前を呼んだ時の驚きが今も残って、頭にあの時の行動が焼き付いているのだろう。
俺は自分で自分を納得させると、静かに口を開いた。
「……いねぇ」
何故だろうか、その言葉を言った瞬間、喉の奥が何かにつかまれたかのようにきゅんと苦しくなった。こんな苦しみは初めてだった俺には、それが何なのか分からなかった。
『……そう、ですか』
少し切なげに口角を上げたAを見て、俺は疑問を抱いた。
何故俺に愛おしいと思う奴がいないだけで、そんな悲しそうな顔をする……？
気になったのでそのことを問いかけようと口を開いた。だが、
『私にはいますよ。愛おしいと思う人』
Aがそう切り出してきたので、問いかけられなくなってしまった。
……あとででいいか。
『その人はですね、最初は怖い人だと思ったんです。でも話しているうちに、あぁ、本当は優しい人なんだなって………不器用な優しさ、ですかね？』
クスクスと何がおかしいのか、笑い出すAを見て、何故か俺は嫉妬をしていた。
―――バサッ………。
『……ザンザス……さん？』
「うるせぇ」
自分でも、分からなかった。
自分がしている行動がよく分からない。
いきなり俺が立ち上がったのに驚いて笑いを止めているAに俺はお構いなしに抱き着いた。その振動のせいか、肩にかけていたマントが落ちてしまったがどうでもいい。
「……何故お前は、そんなに楽しそうに笑っている」
分からない。何故俺はこんなことをコイツの耳元で囁いているのかが。ただ本性の思うままに動いている……そんな気がした。
『え……？あの、ちょっと……ザンザスさん？』
「お前はそんなに………」
そんなに楽しく笑うほど、
「―――ソイツの事を愛しているのか」
Aを抱きしめる力を強める。感情を制限できてない気がするが、今となってはどうでもいい。
俺は何故、コイツの思いを寄せている見たこともない相手に嫉妬をしているのだろう。
『………愛しています』
そう耳元で囁かれた言葉は、どこか重くのしかかった。
「……そうか」
さらに抱きしめる力を強くする。先程よりも嫉妬心が増しているような気がして、もう何が何だが分からなかった。
『……ザンザスさん、苦しいです……ッ』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
【黒バス】刺されても痛いだけなんだけど・・・（汗）【境界の彼方】Part２ 【黒バス】花宮の幼馴染は花宮と違って純粋・・「普通だろ」
【黒バス】トリップ先の生活ほんまビックリの連続やわ〜【トリップ】もっと見る
「リボーン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
百合異乃(プロフ) - この作品、すごく楽しく読ませて頂いてます!!更新頑張って下さい！ (2015年6月6日 22時) (
レス) id: f4284e7a16 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 初めまして！ すごく面白いです！！ ザンザスの素直な気持ちが出てて読んでて楽しいです！ 更新楽しみにしてます！！ (2015年1月24日 19時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
雲雀iove - 面白かったです＾＾最新楽しみに待ってます!! (2014年9月1日 10時) (レス) id: eb2b47b9ce (このIDを非表示/違反報告)
MiA - この小説がスゴく好きです。ずっと応援してます!!! (2014年6月22日 21時) (レス) id: 9f43537076 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王１５８世(プロフ) - ボカロ隊長＠タピオカさん» え、何言ってるの？全部だよ(｀・ω・´) 私の主は全てが最高なんです！ (2013年11月6日 15時) (レス) id: e4f608cc50 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ボカロ隊長＠タピオカ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bokarotaityou/
作成日時：2013年10月21日 19時
