La ｆｉｎｅ13 ページ13
そういうとAは、溝に置いていた両手を自分の胸の前に持っていく。そして病室の真ん中まで歩いていくと、小さく息を吸った。
『生まれてしまったこの世界に、光などない。
それでも私が生きているのは……きっと彼方に会えたから。
今日もいつもと同じ日で、退屈していた私は、
毎日の日課のように小鳥の声を聴き、今日も目隠しをした。
「明日には治るかも」なんてちょっと期待を膨らませても、
「それは無理だ」ってどこかで、自分を自分で否定する……そんなモノ。
生まれてしまったこの世界に、光などない。
退屈な毎日に、ある日光が訪れた。
生まれてしまったこの世界で、初めて楽しいと思った日。
それは彼方に会えた………光が差し込んだあの日。』
ふぅとAの息を吐く音だけが響き渡る。
その歌詞と歌声は、あのところどころ聞こえてきたものと同じだった。
……やっぱりこいつが歌ってたのか………。
これがギャップと言うものなのであろうか。歌ってる時の表情と俺と話している時の表情がまるっきりちげぇ。
『……ザンザスさん？』
「………綺麗だな」
『えッ…？』
「…カスが、誰が二度も言うか」
『え、えっと……ありがとうございますッ』
にっこりと微笑みながらお礼を言うA。今度は作り笑いではなく、ちゃんとした笑顔だった。
『それで……話、続けてもいいですか？』
「あぁ」
『では…………母が作詞したその曲をもらった私は、父にどういう歌詞か聞きました。目が見えないので歌詞を渡されても読めませんからね………。そして父が歌詞を読み終えると、私にこんなことを言ってきたのです。「この歌のように、お前にも生涯を共にする光が現れるといいな」って。まぁ私は小さかったこともあり、意味が解らなかったんですけどね』
くすりと小さく微笑むと、Aは俺に近づいてきた。
『でも今は………その意味が解ります。ザンザスさんにはいるのですか？愛おしいと思う人が………』
「………」
俺の方に手を伸ばしてきたので、何となくその手をつかむ。するとAは大体の場所が分かったのか、俺の手の中におさめていた自分の手を俺の頬に添えてきた。
………愛おしいと思う人、か。
いねぇ。そう答えればいいのに、喉に何かが引っかかったような感じになり、声が出なかった。
いや、出そうと思えば出るはずなのに……何故かそのことを拒んだ。
……何にためらう？俺は愛を知らない、愛することを知らない―――そういう男だろう。
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百合異乃(プロフ) - この作品、すごく楽しく読ませて頂いてます!!更新頑張って下さい！ (2015年6月6日 22時) (
レス) id: f4284e7a16 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 初めまして！ すごく面白いです！！ ザンザスの素直な気持ちが出てて読んでて楽しいです！ 更新楽しみにしてます！！ (2015年1月24日 19時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
雲雀iove - 面白かったです＾＾最新楽しみに待ってます!! (2014年9月1日 10時) (レス) id: eb2b47b9ce (このIDを非表示/違反報告)
MiA - この小説がスゴく好きです。ずっと応援してます!!! (2014年6月22日 21時) (レス) id: 9f43537076 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王１５８世(プロフ) - ボカロ隊長＠タピオカさん» え、何言ってるの？全部だよ(｀・ω・´) 私の主は全てが最高なんです！ (2013年11月6日 15時) (レス) id: e4f608cc50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ボカロ隊長＠タピオカ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bokarotaityou/
作成日時：2013年10月21日 19時
