La ｆｉｎｅ18 ページ18
「……」
『……』
ふたたび抱き合ってから数分、またもや訪れた沈黙。
その沈黙でさえ、こいつと一緒にいられる時間だと思うと、不思議と嬉しく感じた。
『……ザンザスさんって……』
「…………なんだ？」
俺の胸にうずくめていた顔を上げたかと思いきや、急に呼びかけられ、少し反応が遅くなってしまった。
『さっき、数十年ぶりに触れた人肌は愛おしかった、って言いましたけど……何で数十年ぶりなんですか？』
「！……」
『抱き着いてみたら、ザンザスさんってすごく鍛えてるような感じの体格してるって分かって……いたって健康そうで、まず窓から侵入してくる時点で、私みたいに病院やら部屋やらにずっと閉じこもってるわけではないと思いますし……』
「……それは……」
それはこいつ……Aにとっちゃぁ素朴な疑問なのであろう。
……いつものように、本当のことを言えばいいじゃねぇか。人を殺している、と。
なのになぜか、こいつには言えない、言ってはいけないと、俺の中のナニかがそう警告してるように感じた。
……どうしたものか……。
『……？ザンザスさん？』
いきなり黙り込んだ俺に、Aは不思議に思ったのか、少し背伸びをし、自分の顔を俺の方にズイッと近づけてきた。
……こいつ、本当に盲目だよな？
なんでこんなピンポイントで顔の場所を察知できんのか、そこが謎だ。
「……いや……」
そういい、また口を閉じる。
なんて言えばいい？人の命を奪う仕事をしてるから、人肌になんて触れない、と言う以外にどんなことを言えば……。
『……え……っと……、ザンザスさん、無理して言わなくてもいいですよ？』
「他人に言いたくないことは、誰にでもありますしね」と付けたし、少し名残惜しそうに眉を八の字に下げるA。
……そんな顔をされたら、なんだかこっちが申し訳なくなってくる。
「……少し待て」
お前に言いたくないのは確かにそうだが、自分のことを知ってもらいたいと思う気持ちもある。
そう思った俺は、Aの素朴な疑問に答えるべく、少し考える時間をもらうことを要求した。
『え？あ、はい！いくらでも待ちますっ』
そんな俺の心境を知ってか知らずか、Aは先ほどとは違い、嬉しそうに眉を上げて口を緩ませた。
……俺が深い闇だとしたら、こいつはそれを照らす純情な光なのではないかと思うくらいの純粋さに、思わず軽く笑ってしまった。
『え……あ……は、はわわ……っ！』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
【黒バス】刺されても痛いだけなんだけど・・・（汗）【境界の彼方】Part２ 【黒バス】花宮の幼馴染は花宮と違って純粋・・「普通だろ」
【黒バス】トリップ先の生活ほんまビックリの連続やわ〜【トリップ】もっと見る
「リボーン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
百合異乃(プロフ) - この作品、すごく楽しく読ませて頂いてます!!更新頑張って下さい！ (2015年6月6日 22時) (
レス) id: f4284e7a16 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 初めまして！ すごく面白いです！！ ザンザスの素直な気持ちが出てて読んでて楽しいです！ 更新楽しみにしてます！！ (2015年1月24日 19時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
雲雀iove - 面白かったです＾＾最新楽しみに待ってます!! (2014年9月1日 10時) (レス) id: eb2b47b9ce (このIDを非表示/違反報告)
MiA - この小説がスゴく好きです。ずっと応援してます!!! (2014年6月22日 21時) (レス) id: 9f43537076 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王１５８世(プロフ) - ボカロ隊長＠タピオカさん» え、何言ってるの？全部だよ(｀・ω・´) 私の主は全てが最高なんです！ (2013年11月6日 15時) (レス) id: e4f608cc50 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ボカロ隊長＠タピオカ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bokarotaityou/
作成日時：2013年10月21日 19時
