設問2、人間らしさは罪か ページ9
あくる日の昼。
相変わらず無機質な病室の中で踊る活字を眺めていると、昼食を持った担当医が入ってきた。
「昼食だよ、_」
「……いただきます」
目の前に置かれたパンとシチューを口に入れる。
相変わらず、呼ばれたはずの名前は聞こえない。
美味しいという感覚もなく、
ただ「パンとシチューだな」という感覚しか感じない。
私は何故、何か食べても美味しいと感じないのだろうか。
「あ、そうだ。聞きたいことがあったんです」
シチューを口に含みながら言う。
「なんだい?」
「…規範を軸とする世界では、人間らしさは、罪ですか?」
「……なんとも言えないな、それは」
かなり困った微笑みを返される。
人間らしさとは、欲求や衝動のことを言う。
罪悪感こそ人間らしさでもあるが、規範に常に従い、何も思わないそれは、ロボットと同じだ。
なんなら、規範イコールロボットだと考えている。
「まあ、罪と言える部分もあるだろうね。」
「…そうですか」
やはり、この人は敵だと、再確認する。
私は人間らしさが強い。
もしかしたら、この人間らしさがこの世界では"異常"なのかもしれない。
…だとしたら、この世界の"ニンゲン"はロボットなのだろうか?
この目の前にいる人でさえも、予めプログラムされたロボットなの?
「先生、貴方はロボットですか?」
え?と困惑の表情をする担当医の目をしっかり見て問う。
僅かに、ほんの僅かに、担当医の目が揺れた。
が、冷静を装うように微笑み、
「そんなわけないでしょ。」
と返すのだった。
…
「ご馳走様でした」
私は担当医に空になった皿たちを押しつけるようにして渡し、早く出て行って欲しいことを目線で伝える。
しかしそういう時に限って、
この担当医は私に構う。
「君、さっき自分がロボットかって訊いてきたよね。」
「はい、そして貴方はそんなわけないと言いました」
「…ロボットの三原則って知ってるかい?」
私は首を傾げた。
ロボットの三原則なんて聞いたことが無かったのだ。
「知らないようだね。ロボットの三原則とは、『人間への安全性、命令への服従、自己防衛』。そして僕は、君を殺せる。」
「…え?」
私を、殺せる…?
心の中で復唱した時だった。
担当医は空の皿を机に置き、私に近寄る。
「っ…!?」
息が、できない。
その担当医は、私の首を強く掴んでいた。
「…これでも、僕がロボットだと??」
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜花 | 作成日時:2021年2月10日 13時