(2)規範に従う夢 ページ5
そうだ、この世界には「規範」があるじゃないか。
規範。ルール。規則。正義。
それに従えば、悩むことなんてない。
「それが正しい」
「貴方は正しい」
「貴方は成功したの」
どこからかそんな声が聞こえた。
…
朝起きて、歯を磨いて、ご飯を食べて。
着替えて、家を出て、電車に乗る。
学校でしっかり勉強し、帰る。
私は、そういう規則正しい日々を繰り返した。
勉強を頑張った?おかげで、
いい会社のいい所にも就けた。
衣食住も困らない。
何ら普通の生活。
何も思うことなく、ただ規則に従い、
ただ歩き、働くだけ。
難しいことは何もない。
…
けど、「なにか」が違った。
未だ活字は読めないし、音もノイズでしかない。
時々無意識に自分の首に手をかけている。
無意識に涙が流れる。
無意識に包丁を握っている。
無意識とは恐ろしいものだ。
私の規則正しい人生にはイラナイ。
私は、ネットで出会ったあの人に尋ねた。
「無意識を遮断する方法はないの?」
すると、彼はこう言ったのだ。
「…無理に決まってる、その上、君はもう人間じゃないよ、感情無いでしょ」
その言葉を見て首を傾げた。
「人間じゃない?私が?」
_何故?
その問いに、息を飲んだ。
暫く感じなかった「何故」は、私の奥に眠る衝動を掻き立てようとしている。
…今更衝動ナンテ…
「じゃあ、エスを殺せる方法はない?」
私はまた問うた。
すると、彼は若干の間を開けて、こう答えた。
「……もう、殺したんじゃないの?君の手で。いや、君のエゴで」
「いいえ、それが、最近無意識に自分の首に手をかけて死のうとするのよ。」
「え?」
そんな素っ気ない反応を返された。
そして待っていると、また返事が返ってきた。
「…いや、手遅れだね、もう」
私は、その答えの意図を知る由もなく、
また、規則正しい生活を送り、
何も感じないまま死んだ。
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年2月10日 13時