やぶくんとひかるくん【３】（短編集）

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光side



女の子の泣き声を聞いて、
すぐそっちに行っちゃった薮。

やっぱ…俺とでかけるの楽しくないのかな?


そう思うと、俺も一緒にUFOキャッチャーまで
行くことができなかった。



その代わり、近くにあったベンチに腰をかける。



｢やぶ……早く戻ってこいよ｣




薮の方を見ると、見事1発で
ぬいぐるみを取れたみたいで、

小さい子と手を取り合って喜んでいた。



ほんと…ズルいよな……

大事な“ココっ！”っていうところ、
絶対薮は失敗しない。


俺なんかじゃもったいないくらい、
薮は…カッコよすぎる、よ………




｢ねぇねぇ、あの男の人かっこよくない?
今1発でとってたわよ?！｣


｢ほんとだ！あの2人夫婦かしら?お似合いね〜｣


｢そうでしょ〜。自分の子供じゃなきゃ
あんなにお父さんも可愛がらないでしょう?｣




俺がベンチに座ってたら、聞こえてきた女の人の声。



少しだけ…ほんの少し、俺も思ってたけど。




薮とあの子のお母さん、…お似合い、だな。




他にもヒソヒソ声で薮たちの方を見て、

“子供も可愛いから両親も顔整ってるのね〜”とか、
“仲良しそうな夫婦、微笑ましい”…とか、


そんなことを言ってる人がいっぱいいる。



｢薮と付き合ってるのは俺だ！｣って
声を大にして叫びたいけど、

俺は男だからそんなことできない。



今みたいに、周りの人に
“お似合いね〜”なんて言われることも絶対ない。


2人で歩いてたって、周りの人からしたら
ただの“トモダチ”にしか見えないだろう。


薮は…薮はそんな俺と一緒にいていいのかな。



自分の親にも言えないような、こんな関係。

俺は男だから、薮の大好きな子供だって産めないから、
薮のお母さんに薮の子供を見せてあげることも出来ない。


街中で手を繋ぐだけでも、
まわりの目を気にしなきゃいけない。


こんな…こんな関係でいていいのかな。



男の俺なんかと付き合ってないで、
女の子と付き合えば、

街もどうどうと歩けるようになるし、

子供だってできるし。


薮の両親にもなにも恐れることもなく、
結婚…とかお付き合いの報告とか、できるじゃん?


それが、…本当の薮の幸せ、なのかな。



薮には幸せでいてほしい、
常に笑顔でいてほしい、ってずっと願ってるけど

それを出来なくさせてるのって……、

もしかして、………俺だった?

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