やぶくんとひかるくん（短編集）

_２ ページ34

薮said




次に起きたときは、もっと状況が悪化していて…。




｢これ……絶対熱あるやつ…｣




息が荒くなっているのが自分でも分かる。



ここまで本格的に風邪をひいたのは
本当に久しぶりだった。




最近、けっこう忙しかったから気ぃ張ってたのかな。




なんて考えるのもつかぬま。




｢っ……｣




一定の感覚で俺の頭を襲う頭痛の波がやってきた。




｢はぁっ……ひかるっ……ひか…｣


こんなとき、1番に頭に浮かんでくるのはひかるで。




もう流石に俺も…我慢の限界。






いつもなら“ひかるに移っちゃう”って

ためらうけど、今の俺には

そんなこと考えてる余裕なんかもうなくて。






なんとか残っている力でスマートフォンを掴み

電話履歴の1番上にある俺の愛しい人の名前を押す。





1コールもしないうちに出てくれたけど
相手はなにも喋らない。




そりゃそうか。今俺ら喧嘩中なのに

いきなり電話なんかかけてきたら

ビックリするよな……それに怒ってるはずだし…。




…俺、自分勝手すぎるだろ。



｢ごめっひかるっ…ｺﾞﾎｺﾞﾎｯ間違えたっわりぃっﾊｱﾊｱっ…｣



なるべく、ひかるにバレないように…
平静を装って電話をきる。




最後に光がなにか言ってた気がしたけど、
意識が朦朧とする俺にははっきりとは聞き取れなかった。




頭がガンガン鳴る。


…俺、どうなっちゃうんだろう？


もう、ひかるには会えない…？
そんなの……嫌だ………



｢ひかる………｣



そう呟いたと同時に、俺の意識は途切れた。

_３→←おくすり。(修正版)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す