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「心配してくれて有難う。
タクシーを拾って帰るから、君も気をつけて。」
よろよろと立ち上がった伊黒さんはそのままふらふらとタクシー乗り場の方へと歩いて行ってしまった。
ぼうっとその背中を見つめていた視線を落とせば、先程まで伊黒さんが座っていたベンチに置き去りになっているトートバッグ。
急いでベンチにあるトートバッグを抱えて、伊黒さんが歩いて行った方向へ走る。
こんなにも息が苦しいほどに胸が高鳴るのは走っているせいなのか、別の理由からなのか。
答えは明確だった。
ちょうどタクシープールへ辿り着いた伊黒さんを捉えた瞬間、手前のバス停から降りてきた人の波に押されて、抱えていた伊黒さんのバッグの中身を落としてしまった。
地面に放り出された中身を急いで拾い上げると、
“鬼滅学園 伊黒”と書かれたキャンバスノートと“藤乃花大学”と太字で書かれた付箋だらけの赤本が目についた。
伊黒さんは高校生…？
いやでも、普通に堂々とお店でお酒を飲んでいたし、未成年という訳ではないのだろう。
鬼滅学園といえば、隣駅にあるマンモス校だ。
確か定時制もあった気がする。
伊黒さんは定時制に通う学生だったらしい。
『なんだ、歳は違うけど同じ高校生かぁ。』
自分と同じ学生なのが分かり、少し浮かれていると
伊黒さんがタクシーへ乗り込もうと手を挙げたのが見えて慌てて私はまた走り出した。
『伊黒さん…っ！！
大事なものをお忘れです！！』
タクシーの後部座席に乗り込んだ伊黒さんにバッグを差し出す。
すると、伊黒さんはバッグを持つ私の腕を掴み、そのままタクシーへ引き入れた。
『えっ？！伊黒さん？！』
慌てる私の口をそっと塞いだ伊黒さんが、
「出してください。」と運転士へ告げた。
行き先は、私が来る直前に伝えていたらしく、バタンと閉じられた扉にロックを掛けて、車は走り出した。
私が大人しくなったのを確認すると、口元の手をさっと下げた伊黒さんが、窓枠に肘をついてこちらを見た。
「感謝する。上出来だ。」
あやすように私の頭を撫でたその手が優しくて、
とっくに息切れなんて治まっているはずなのに心は
いつまでも落ち着きを取り戻せない。
流れる沈黙に耐えきれず、徐に自分のバッグから取り出したペットボトルの水を飲んでいると、伊黒さんの視線に気付いた。
『…飲みますか……？』
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ゆきの(プロフ) - 伊黒小芭内めちゃくちゃよかったです！！凄い推してるのに，あんまり作品がないので．．．私，伊黒さんと宇髄さんと実弥さん好きなので，とても面白かったです！！！ (2022年2月28日 0時) (
レス) @page30 id: 979384fcc7 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひちゃんも読みに来てくれてありがとなァ！！ちゃんと甘く書けてたのか不安だったから、そう言ってもらえて嬉しい！！ルビは最近1番気をつけてる(笑)一緒にお祝い出来て私も嬉しい❤️あさひちゃんのお話も最高だったゾ！！！！ (2021年11月29日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» 早速読みに来てくれてありがとう！ハピエンを匂わせたままにしてたので、このタイミングでしっかり伏線回収させて頂きましたァ！！この実弥くんだから、夢主さんはやっと過去を清算できたのかな、と思ったり…。ひよちゃんのコメント力高すぎていつも文字数足りない(笑) (2021年11月29日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - りりちゃん…！続きをありがとう！甘い!!!実弥さんの甘い言葉の数々にきゅん…素敵な誕生日のお話ありがとう!!!そして、ルビありがとう！助かります！（土下座）一緒に実弥さんのお誕生日お祝い出来てとっても嬉しいです♡ (2021年11月29日 0時) (レス) @page28 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - りりちゃん、実弥くんの続きを読ませてくれて本当にありがとう!! こうなってくれると良いな、と思いながらの完結だったので、素直に嬉しいです。過去の残像を払い除けられたのは、実弥くんだからか……お誕生日おめでとうございます…!! (2021年11月29日 0時) (レス) @page28 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羽糸 | 作成日時：2021年8月7日 20時
