私の弟。【山口忠】

蔦が張り巡らされたコートを、烏はどう舞う？ ページ12

青葉城西は、怖い。


二回戦で当たった伊達工業も、怖い空気を纏っているという点では一緒なのだが


怖さの種類が違う。


伊達工業が高さ故の威圧感なのだとしたら、


青葉城西は技術故の切迫感とでもいうところなのだろう。



最初の一点は嶋田さんが


ツーアタックかよ…と驚いたように言っていた。


その後、それほど威力のないように見えたサーブを選手が取りにくそうにしており、


それが、後衛セッターと入れ替わるミスが連続しやすい位置を狙い打っていることを


嶋田さんのお友達の滝ノ上さんから、隣の女の子達と共に教えてもらった。


最後、滝ノ上さんが女の子達からおじさんって言われていたのは


少し可哀想で面白かったなぁ。




1セット目は、青葉城西が先取。




圧倒的な技術にだんだんと蝕まれていく様子が、目に見えてわかる。


特に、9番君。こちらにまで焦燥感の伝わりそうな感じ。


ピーッ


ここで、2番君に交代か。


あっ、昨日の泣きぼくろくん。どんな感じなんだろう。




なんか、焦りが抜けた感じ。いい意味で雰囲気が緩くなったというか。


しかもブロックの並び順、いつの間にか変わっている。


ブロックのスイッチを行ったみたいだ。


青葉城西のアタックは、月島君に止められた。


ドシャットというのか。名前ぴったりの気持ちいいブロック。


それを引き出したと見られる泣きぼくろくんもすごいけど、それを見抜ける滝ノ上さんもすごい。



でも、それも長く続かない。


青葉城西の対策の立て方が巧すぎる。


どうしよう、このままだと負けちゃうよ…




ここで9番君に交代。



早速サーブ。


すごい嬉しそう。まるでおもちゃを与えられた子供みたいな、そんな感じ。


ボールを愛してやまないんだろうなぁ。



9番君、コート内での会話が増えた。


少し穏やかになった気がする。


そして、月島君もなんか生き生きし出した。忠がご機嫌なのでわかる。


「おぉー？山口姉、ご機嫌？」


滝ノ上さんが聞いてきた。多分今、なんだかわからないけどすごい気分が昂っている。


「はいっ！チョーご機嫌です！！」

多分、忠が月島君見てご機嫌なように、私もそうなんだろうな。


「姉弟は何かしら繋がってんのかねぇ」


顎に手を当て、首を傾げてそういう嶋田さん。


「そうかもしれないです！！」


その後、烏野はもう一回ドシャットを決め、2セット目を取った。

脳裏を占める、最悪の想定。→←忠にとっても、私にとっても。

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