六勝目 ページ41
「キグルイ、どうだった」
「ビンゴ！
姉さんで合ってたよ、すぐこっちに来るって！」
「そうか」
キグルイのネエサンは話しやすい。
あの人が聞き上手なのか、俺が無意識に気を許してるのか。
「姉さんと歌舞斗君って、少し似てるから」
「そうか？」
「うん。
完璧なところとか、少し優しいところとかさ」
「俺は完璧じゃない」
「またまた〜」
俺はかなり不器用だ。
料理もできないし、針に糸を通すのに三十分かかる。
下手したら一生かかるかもしれないが。
「まだ美徳は残ってる。
無駄話する暇があったら考えろ」
「あとは慈悲と謙譲だよね？
思い当たる人がいないんだけど…」
「そもそも、知っている人だけで探すのは困難ですよね」
ニコニコと笑いながらチクバイが言う。
とりあえず足を蹴っておいた。
「救恤と慈悲は似たようなものだろ。
何か知らないのか、オマエ」
「ちょっと難しいですねー」
「絶対何か知ってるな。
吐け」
「そもそも、慈悲は仏教言葉なんですよ。
俺は嫌いですかね。関わりたくもない」
「オマエの好みは聞いてない！」
肩を掴んで揺さぶると、チクバイは手をあげてひらひらと振った。
「この動き、誰のかわかります？」
「…トツ」
「正解です。
まぁ、特に意味はないんですけどね」
蹴る。
「痛っ」
「か、歌舞斗君。
この人偉い人でしょ？
そんなに蹴っていいの？」
「ヘコやトツの従兄弟だ」
「え？」
「だからいいってわけではないんですよ？
ただ俺は許します。
可愛いもの、大好きなので」
もう身長的に可愛くないと思うんだがな。
「そうですね…
仏様みたいな人を探したらいいんじゃないですか？」
「適当に言っただろ」
「バレました？」
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作者名：future*show | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月30日 13時
