六勝目 ページ26
「…柳瀬さん。誰にメール送ったんですか?」
「ん、知り合い。
凹ちゃんも知ってる奴だぜ?」
「そうですか」
嘘はいってない。事実しか言ってない。
竹梅は凹ちゃんの知り合い(友人?)だし、
俺の知り合い(元仲間)でもある。
「下校時間って何時なんだ?」
「あと少しですよ。
皆さんもちゃんと時計は見ていると思うので、戻ってきますよ」
「サンキュー」
スマホの電源を切る。
ふと凹ちゃんのほうを見ると無表情でこちらを見ていた。
「…ん?」
「何でもないですよ」
「いや、凹ちゃん顔色悪くね?
青白いというか、赤いというか…」
「さっき走ったからじゃないですか?
呼吸も整ってますし、大丈夫だと思いますけど」
凹ちゃんも凸君と同じく体は強い方じゃない。
かといって、病弱なわけでもない。
健康だけど不健康。そういう状態だ。
「…ならいいけど。
あ、凹ちゃん。あの話ってどうなってる?
なるべく早く決断を下してほしいんだけど」
「まだです。
残念ながらボクは優柔不断な方なので」
「おい、あの話ってなんだ」
「か、歌舞斗君。
何でもないですよ、何でもないです」
「…」
少し不服そうな顔をしている。
嫉妬とかいうやつだろう。
男の嫉妬は醜いなんて言うが、俺はそう思わなかった。
あえて抱いた感情に名称を付けるならば、憧憬だ。
俺が今まで、感じたことがない物。
感じる必要がなく、感じる場面がなかったもの。
七つの大罪とかいう人間の欲の集合体の一つ。
俺が、求めていたもの。
「…柳瀬さん?
演劇部の皆さんも貴方の協力者も集まりましたよ」
「あ、あぁ。ありがと凹ちゃん」
「どういたしまして」
…今は、仕事に集中しないとな。
俺は”日本一の俳優”なんだから。
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作者名:future*show | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月30日 13時