壱 ページ2
澄んだ空気の中目を覚ます。
もそもそと手を出して時計を取ると、時刻は5時52分。
アラームに起こされるより前に起きれたことに気を良くしながら布団をばさーっと蹴飛ばした。
部屋に差し込む穏やかな明るさが今日も快晴であることを示していた。
『いい匂い。』
厨を覗くと、本日の厨当番の歌仙と光忠が振り返った。
｢おはよう主。今できるから少し待っててくれ。｣
｢今日は主君のリクエストの炊き込みご飯だよ。｣
そう言ってせっせと作業する二振のご飯はとても美味しい。
腹がぐぅと鳴いた。
『ご馳走様でした。』
朝餉を食べ終わると鶯丸にこいこいと呼ばれた。
食後の茶の誘いだった。
急ぎの業務は特にないので快く承諾する。
三日月と小狐丸も一緒だった。
｢主よ、じじいが茶をいれてやろう。｣
｢主様、今日も私の毛並みはモフモフですよ。ほらほら。｣
｢こらこら、もっとゆっくり茶を楽しめ。茶に失礼だろう。｣
｢主、そろそろ仕事にしないかな。｣
迎えに来た長義にごめんごめんと返事をしてお茶会を暇させてもらう。
小狐丸がしゅんとした目で見てきたが今更そんな顔してもなびかないぞ可愛い。
カタカタカタ。
キーボードの音だけが鳴る。
我が本丸の業務補佐は二振。
帳簿や手入れ部屋や鍛刀部屋、及び各当番の管理を補佐してくれる長谷部。
そして日課報告のデータ作成及びこんのすけを通じて政府とのやり取りを補佐してくれる長義だ。
この二振、とてつもなく優秀なのだ。
二振が本丸を空けているときは博多や肥前が手伝ってくれることもある。
『そろそろ休憩する？』
「そうだね。」
「では俺は何か菓子を持ってきましょう。」
我が本丸はとっても穏やかな本丸だと自負している。
テレビの中や舞台の上の某本丸のような、男士同士のいざこざや大きな危機に瀕したことはない。
審神者になって四年、男士とも打ち解けられている(はずだ)。
そんな呑気な事を考えていたのがいけなかったのだろうか。
「遠征部隊の帰還だ。」
「おやおや、あんなに急いで帰ってこなくてもいいのに...急ぎすぎじゃないかい？」
確かに、先程から玄関の方が騒がしい。
皆元気だなぁ。
「あるじさまぁ！！」
突然スパンッと音を立てて障子が開かれる。
血相を変えた今剣が飛び込んできた。
「くさのものが、くさのものがぁ！」
「お、落ち着いて今剣。」
肩を揺すっていると息を切らした篭手切江も入って来る。
「あ、主大変です！めんばぁが忍者に捕まってしまいました！」
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作者名：かがり | 作成日時：2020年10月14日 22時
