おとなりさんのそらるさん。【歌 い 手】

おとなりさんその39 ページ41

＊そらる SIDE＊

　

「俺は…俺は…！」

　
あの後、放心した様子で警察に連れていかれるAの弟を見て
ようやくすべて終わったんだなと、全身の力を軽く抜いた。
いやー、攻撃してくれればこっちのモノとか思っていたけど……ね。

　
「A。終わったよ。もう大丈夫だって。」

「…はい…はい…っ」

「あーほら、泣かないで。」

　
ほっとしたのか、泣きじゃくるAをそのまま抱きしめて落ち着かせる。
なんか遠くでカシャっと音が聞こえた気がする。…やば、皆いたんじゃん？
顔をあげて辺りを見渡せば、木の影にガッツポーズをしているまふまふたち。
その横のベンチにはいつのまにか志麻君とセンラ君が座ってるし
まふまふたちと反対の木には天月とnqrse…あ、もうこれここで？このタイミングで？

　

「いや、誰にも渡す気ないけどさぁ…？」

「ふぇ…？」

「これ公開処刑にならない？ねぇ、今日俺ヒーローじゃないの？」

「彼方さん…？」

　
ブツブツと本音をこぼせば、不思議そうにこちらを見てくるA。
その目にはもう涙が光ってなく、抱きしめられたことによって顔を赤くしているだけだった。
…でも、このタイミングってのも卑怯だよねぇ…ま、いいや。大人はずるいんだよ。

　
「…あのさ、A。」

「はい。」

「さっき、弟君にAは俺のだからって言ったじゃん？」

「あ、はい…」

「…嘘じゃない、から。」

「…え。」

　
絶対に顔赤いだろうなぁ、俺。
でも、ちゃんと告白するなら…と、抱きしめていた身体をそっと離してまっすぐに見つめる。
見つめた先の彼女も、さすがにこの先の言葉が分かったのかさっき以上に顔を赤くしていた。

　
「これからも、俺がずっとAを守る……好きだよ、俺と付き合ってくれますか？」

「彼方さん…え、っと……その……」

「大丈夫、ゆっくりでいいよ。」

　
とは言うが、俺も正直余裕なんてないんだよね。
早く返事が欲しい、そして、叶うなら思いきり抱き締めたい。

　

「あの、私も……好きです、彼方さん。」

「うん、ありがとう。」

「ごめんなさい、ちょっと驚いて……うわっ」

　
一歩前に出て、Aをそのまま抱きしめる。
よかった……これでずっと一緒にいられる、そう思うとすごい嬉しかった。
おずおずと、俺の背中に手を回してくれる彼女が愛おしい…


　
「おめでとうございますそらるさぁぁぁぁん！」


　
感極まったまふまふが、飛び出してくるのもまぁ…想定内だけどさ。

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