おとなりさんのまふまふさん。【歌 い 手】

おとなりさんその26 ページ28

＊まふまふSIDE＊

　
ポタリ。
まだ覚醒していない意識の中で、何かが頬に落ちたような気がした。

　
「んっ……」

「まふさん…？大丈夫ですか…？」

「……A………？あれ、どうして……」

「よかった…ほんと…よかった……っ」

　
…どうして、彼女がココにいるんだろう。
ぼやけた視界が鮮明になってくる、意識が少しだけ覚醒すれば
自分の頬に落ちていたのは、目の前で泣きじゃくっているAの涙ということに気づいた。

　
「泣いてるの…？」

「誰の…せい…だと、思ってるんですか…！」

「…………ごめん、もしかして…着て、くれたの…？」

　
まだ重たい右腕を、何とか動かして。
自分の左側にしゃがんでいる彼女の頭をそっと撫でる。
…また、やっちゃったのか。確かに3日寝てなかったもんなぁ……

　
「まふまふ、大丈夫か？」

「そらるさん…すいません、今日打ち合わせ……打ち合わせ！？」

「お前なぁ、ホント無茶するなよ。」

「うらたさん…待って、まさか……皆いるの？」


　
意識が戻ってくる半面、また前身の血の気が引いていくのを感じた。
そうじゃん、今日動画撮影の打ち合わせで……飛び起きてソファーの背後を見れば
ダイニングテーブルには志麻君とセンラ君、luz君に天月君がいて。
ソファーの背もたれに腕をおいているのはそらるさんとうらたさん。
そして、ソファーの下。Aを両隣で宥めているのはさかたんとluz君だ。

　
「まふ君だいじょぶか？Twitterとかにも浮上してへんかったから心配したで。」

「志麻君…ごめん、ホントごめんなさい！」

「気にせんでえぇよ。むしろ寝不足で、ってことならよかったわ。」

「よくはねぇけどな。」

　
うらたさんのツッコミに何も言えなくなる。
えっと、確か…作業は終わってたはず、それで打ち合わせまで少しだけ仮眠でも取ろうとして
その前にいろは達にご飯あげて……そっか、それで気絶したんだ。


　
「うわ…みんなホント申し訳ない……」

「まぁ、まふはまずブランに謝らんとな！」

「だな、本名暴露した挙句泣かせてるもんな。」

「え…あ…！？ごめん、ブラン！ホントごめん！」

　
そう言えば俺、目が覚めた時皆いるの忘れてAって呼んだよね…？
まだ泣いている彼女に謝ると、彼女はそっと、俺に手を伸ばしてきた。

　
「…名前で呼んだことは気にしません、luz君もよくやるので…でも。」

「うん。」

「心配、したじゃないですか…！」

「…ごめんね。」

おとなりさんその27→←おとなりさんその25

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す