甘い香り2 ページ16
俺は皿に盛り付けたパンケーキのあまりをそのカイリューに差し出す。
食べていいのか？と困った顔で俺を見つめてきたので無言で頷いてやると一礼して食べた。
トレーナーと違って礼儀正しいなお前、という意味も込めて撫でてやると嬉しそうな表情。
それに嫉妬した俺のカイリューも撫でろと言わんばかりに俺の腹に頭を押し付けてくる。
それを見たゲンガー、メタモン、そして野生ポケモン達も撫でてと寄ってくる。
多い多いせめて順番に来てくれ。
「そうだ白影ちゃん今から暇かい？」
「暇じゃない。」
「そうか！じゃあ一緒にフスベに来てくれ！！みんなにキミを紹介したい！！」
「俺の話聞いてた？」
コイツ俺の発言の全てを自分の都合のいいように変換してやがる…。
もうヤダさっさとずらかるぞ。
ゲンガーとメタモンをボールにしまい、野生ポケモンにバイバイと手を振ったら“そらをとぶ”用のゴーグルを付けてカイリューに乗って飛んだ。
今日の飛行速度はいつもより速い。
首が取れそうだ。
「速いね白影ちゃん！！よく育てられたカイリューだ！！やっぱりオレたち相性いいんじゃないか！？」
え？結構速く飛んでる筈なんだが？
さも当然のように俺と並列飛行してやがるよこのスーパーポジティブ野郎。
あと、ちょっとずつ横から距離縮めるのやめて。
このままだと逃げ切るのは不可能。どちらのカイリューの体力が先に尽きるかの持久戦になってしまう。
別の方法で逃げるしかない。
と思ったのだが俺のカイリューが更にスピードを上げた。
「おっ、おいカイリュー！！これ以上は！！」
流石にこの速さは耐えられない。
思わずしっかり掴んでいたカイリューから手を離してしまった。
あ、流石にこの高さは死ぬ。
それにしても綺麗な大空だなぁ。
俺を包み込んでくれる。
全てを包み込む。
まるで10代目のような＿＿＿
落ちていく俺が最後に目にしたのはものすごいスピードで飛んでくるカイリューと、こちらに必死に手を伸ばしているワタルだった。
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作者名：王子 | 作成日時：2021年5月18日 7時
