その音柱、誘拐犯。【宇髄天元】

肆 ページ5

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そろそろ、私が遊女になった経緯を話そうと思う。


家族が天元に殺された後、
もちろん私には帰る場所など無くなった。


その場にいても、身寄りの無くなった私は
きっとすぐに遊廓へと売られていた。


名家の産まれであった私の価値は、財産。
それを無くした私への価値など皆無ということは言われずとも分かっていた。


幼くとも分かる。
そんな付き合いだったから。







だけど天元は、そんな私をそこから連れ去った。





｢お前のこと、攫ってもいい？｣




その言葉に無性に惹かれた記憶がある。


今にして思えば、家族を殺された悲しみに暮れる間もなく告げられたその言葉に “救い” というのを感じたからなのかもしれない。


…まあ、家族を殺したのは天元なのだけれど。



そんな訳で連れてこられたのは、
今まで育ってきた環境からは考えられないほど小さく、小汚い小屋だった。


お風呂や厠なんてものは当然なく、
中にあったのは誰のものかも分からない荷物たち。



所謂倉庫のような所だった。



一晩かけて天元と掃除した記憶が懐かしい。
中にあった荷物を全て捨てて、朝日と共に現れたのは四畳半程の一間。


そこで私は一人、暮らし始めた。



もちろん、手に職はない。
職をつけるための知識も、人脈もない。


私が生きていくためには、天元が必須条件だった。





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