廿壱 ページ22
.
『……ん』
目を覚ませば、そこは消毒液の匂いでいっぱいの部屋だった。
私以外にも何人かの男の子がベッドに横になっていて、病院らしき所であることはすぐに分かった。
「おはようございます。目が覚めたんですね」
気配もなく、現れたのは笑顔がとても可愛らしく
毛先が紫色の女性。
一目で天元と同じ仕事をしている人なのだと分かった。
あの日、屋根上にいた彼と同じ服を着ていたのだから。
『………あの、』
「ああ、大丈夫ですよ。宇髄さんには何も言っていないので」
私の心中など彼女にはお見通しらしい。
胡蝶しのぶです、と名乗った女性は気を失った後ずっと看病をしていてくれたそうで、ありがたい気持ちとそのまま死んでしまいたかったという気持ちが相まって上手く顔向けが出来なかった。
「それで、完治したらどうするんです?」
と、しのぶさんは私に聞いた。
どうする、と言われても私には帰る場所など無い。
強いて言うならば、あの店としか言えない。
「良ければここで働きませんか?」
私の事情も全て把握されているのだろうか。
にっこりと微笑んだしのぶさんに思わず首を縦に振りそうになってしまったが、私の中の理性がそれをかろうじて止めた。
ここに居てはいけない。
もう、彼と共に生きてはいけない。
……だって、私たちは最初から共に居るべきでは無かったのだから。
『…居るべき場所に、戻ります』
「そうですか…。
宇髄さんには?」
『………なにも、言わないでください。』
布団を握りしめ、下を向いてそう言えば
しのぶさんは少し困ったように眉を下げて、承諾してくれた。
そうして、私は蝶屋敷と呼ばれる場所から去った。
天元が目を覚ます、前日の事だった。
.
419人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メイデーア - 天元がヤバすぎる(イケメンすぎる)。 (1月12日 21時) (レス) @page28 id: 8fc649d94d (このIDを非表示/違反報告)
わかな - 面白い (2022年1月21日 17時) (レス) id: 3919d3be97 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - やばい…この音柱、相当カッコいい………!!!! (2021年5月6日 2時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - 環さん» 泣かないで…っ!ハピエン…にできるように頑張るっ!! (2021年5月5日 21時) (レス) id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - 柚葉さん» 全ては新章にて明らかになります…っ! (2021年5月5日 21時) (レス) id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:奏海 | 作成日時:2021年4月20日 21時