その音柱、誘拐犯。【宇髄天元】

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｢A！指名だよ！｣



『かしこまりました。』




今日も白粉の匂いがきつく鼻につく。
誰の、とは言わない。

ここに居る人達は皆同じ匂いを纏っているから。
他でもない、私も。









『…Aです。失礼致します。』



いつも通り、指名を受け
私を買った男の人の待つ部屋へと向かう。



部屋の前で一言声をかけて、静かに襖を開ける。



その後は、分かるでしょう？
私を買ったその人に愛される。


…身体だけ。


私も同じ愛を返す。


もちろん、身体だけ。




そんな毎日。

私は遊廓の中の、ある一つの店で働く遊女。



元々は、名家の娘だった。

家庭には恵まれていた、と思う。
笑顔の絶えない家だった。



だけどある日突然、そんな日々は目の前から消えた。



額に飾りを付けた男の人が
家族を全員殺してしまったから。




何故か私だけは殺されなかった。
理由は、知らない。




目にも止まらぬ速さで家族を殺めたその人は、
宇髄天元だと名乗った。




天元、に聞けば
どうやら私の一家は裏社会でも家業をしていたらしく、それがよく思われなかったらしい。



所謂、嫉妬によって殺された。






その後私は天元に匿われてここまで生きてきた。




どうして、遊女になったのかって？


それはまた次の機会に話そうと思う。






今日は、色んな人が私を買ってくれていて
忙しいから、ね。









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