椿、深き翠に落つる。【庭球浪漫/立海/男主】 (ページ34)

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滑り落ちた短剣が、音を立てて転がる。

ずちゅ、と聞きたくもない音を立てて刺さったものが抜かれると同時に、支えを失った俺は、そこに倒れた。

……ああ。俺は、止められなかったのか。

あいつはどうなる？それに……弦一郎、お前だって危ないんだぞ。

なのに……

「残念だな、蓮二。」

今まで聞いたこともないような冷たい声。仰向けにさせられた体に、精市がのしかかった。

「君のこと、信頼していたのに。……君も、赤也たちと同じだったんだね。」

血のついた短刀が見えた。恐らく、弦一郎が俺の体を刺したもの。

「お国のために働けないなら、君はもういらないよ。」

「……せ……いち……」

「呼ぶな。煩わしい。」

瞬間、別れの言葉の代わりと言わんばかりに、精市が短刀を俺の胸へ突き立てた。

……精市。弦一郎。俺は、端から、お前たちと同等には立てなかったのだな。

きっと、俺は、二人にとっても。

(端から……無用な、人間……だった、のか……)

赤也。ジャッカル。柳生。みんな。

……すまない。