陸拾漆 ページ20
甘味処の壁に寄りかかったままの時透くんの顔の隣に手をつき、もう片方の手を彼の頬へと添える。
顔をゆっくりと時透くんの方へ近づけて、
彼の口と私の口を重ね合わせた。
時透くんは瞳を大きく見開き、眉毛をあげて心底驚いた表情をしている。
「えっ」
「いつもの仕返し」
そう言って、にやりと口角を引き上げた。
時透くんはめずらしく、まだ顔を赤くしている。
いや、かわいいっ。
「っ、そんなこと言うなんて、生意気な口だね。」
「え、んっ」
背中に衝撃が走ったと思ったら、瞬きする間に、目の前にあった壁が背中にある。唇に柔らかいものが当てられ、目を開くと視界いっぱいに時透くんの顔。
先程まで私が優勢だったのに、今は時透くんにされるがままになっている。
まだ少し赤い顔の彼に、また心臓が狂い出す。
「仕返しの仕返し。僕のこと、舐めないでくれる?A。」
耳もとで囁く彼のその言葉に、肩が大きく揺れた。
「ふふっ、まだまだだね。」
そう言って口角をあげる彼を見て、惚れるな、という方が無理だろう。私、時透くん馬鹿だし。(自覚済み)
「気を取り直して、そろそろ行こうよ。
…袴、似合ってるよ。」
そう、私の手を取る間際に、また耳もとで呟いた時透くん。
そういうとこ、ずるい。
「無一郎くん、も、似合ってる…」
「!ありがとう、A。」
体が、無一郎くんの匂いで包まれる。
この胸の鼓動が彼に伝わってしまうのではないか、とドキドキする。
嗚呼、やっぱりどんなときでも好き。
「A、行こう。」
「うんっ、そうだね。」
名残惜しさを感じながらも、手を繋いで歩を進めた。
110人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美雨音トウカ - なずなさん» そんな風におっしゃって下さるだなんて、とても嬉しいです!モチベーション凄くあがります…!これからも頑張って更新しますので、是非宜しくお願い致します! (4月21日 11時) (レス) id: 212377e0a4 (このIDを非表示/違反報告)
なずな - 心臓が…爆発…しました……最&高です!!! (4月14日 16時) (レス) @page19 id: f22ade9e4c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美雨音トウカ | 作成日時:2024年3月20日 0時