拾陸 ページ17
「ひぇっ、と、時透くん!?」
とまぬけな声が漏れる。
時透様、顔が近いです。
その距離、わずか一寸。
少しでも動けば鼻と鼻が触れる。
私をあの世におくりたいの!?
てか時透くんいい匂い…あ、流石にこれはアウトですかね、全力で謝らさせて頂きます。
「なにまぬけな声だしてんの。こんなとこに座ってたら邪魔でしょ。」
「え、あ、そうだよね!あああっちいこう!」
「うん。」
心の臓の音がうるさい。
時透くん、知ってた?私不意打ちに一番弱いの!ここ数週間でどれだけ寿命が縮まったことやら。
「そういえば、蟲柱の人といたけど、君はどこに行こうとしてたの。」
………まって、そういえばしのぶちゃん、どこいったの。
…おいていかれたんですけど。
急に時透くんと2人だけになったことに混乱する。
「え、えっとね、その、と、時透くんのとこ、行こうとしてたんだけど、もしかして時透くんなんか予定あったの?あったんだね、そうか、じゃあいいや、私、か、帰るね。」
そうして、理由のわからないことを言って急いで立ち上がると、
「ちょっとどこいくの。僕は予定があるなんて一言も言ってないんだけど。」
そう言って私の手首を掴む時透くん。
いやいやいや、無理、無理、時透くんが私の体に触れているんですけど。しかも時透くんはしゃがんでいるから上目遣いになっている。…余命200年縮むよ!?
…あ、ちゃんと自分が変態気質なことには気づいてますよ。
表には出していない…つもり。
「なんで僕に予定があるなんて思ったの。」
「だ、だって時透くん、屋敷の方から来たし、今からどっか、い、行くのかなあって」
「ああ、そっか。
僕、君に会いに行こうとしてたんだよ。」
ええ!?時透くんが、私に会いに!?ど、どうしたんだろう。
「…これ。君のでしょ。」
そう言う時透くんの手にあるのは、私のハンカチ。
「あ、それ私の…無くしたと思ってたやつ!」
「蝶屋敷の僕のベッドの横に落ちてたから。はい。」
そう言って、私の手の中に無理矢理ハンカチを押し込む時透くん。
「…この間は知らなかったけど、君が僕のこと運んでくれたんだよね。君に運んでもらったのは、なんだか癪だけど、
まあ、…ありがと。」
目を逸らしてそう言った時透くん。そのまま速歩きで屋敷に戻ってしまった。が、
髪の間からちらりと見える耳は、少しだけ、本当に少しだけ、赤く色づいていた。
そんなことされたら、やっぱり、期待しちゃうよ___
55人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美雨音トウカ - ふゆさん» 申し訳ありません!!教えて下さって本当にありがとうございます…!へなちょこ作者で申し訳ないです。そして何度か読んでいただけてるだなんて、もう胸が嬉しさでいっぱいです…!本当にありがとうございます! (5月6日 9時) (レス) id: 212377e0a4 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ(プロフ) - 初コメント失礼します。とても素敵な作品で何度か読ませていただいています。ただ参拾弐が抜けているのでもし非公開にしてるなら公開お願いします🙇♀️ (5月3日 19時) (レス) @page33 id: 2415585283 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美雨音トウカ | 作成日時:2024年2月28日 23時