限界オタクの隣人事情 [斉藤壮馬]

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壮馬のあの言葉を聞いた日から数日。


私の心には大きな穴が空いた。


あ、物理じゃない方でね。


こんな状態でいいのかなと思いながらも、
本日あのイベント会場に降臨。


今の私にできる
最大限のおしゃれをしてきた。つもり。


グッズも買って準備万端。


由「お〜…これがチケット戦争を勝ち抜いた
オタクの皆さんですか…」


『全員勇者に見える』


由「A、どうする？
もう開場してるから入れるには入れるけど」


『精神統一したいから入ろ』


由「あいよ。じゃ行こっか」


会場に入って、ざっと確認。


身だしなみOK、ペンラOK、手荷物OK。


おし、いけるぞ。


演者からはこっちのことなんて見えてないかもしれないけど、整えておくに越したことはないしね。


スマホをいじりながらぼけっとしていると、
会場が暗くなって始まりの合図。


さて、楽しむとしますか。


今日の壮馬は私の推し。


脳の切り替えはできているのに、
心の切り替えはできないままで。


今にも張り詰めた心の糸が切れそうなくらいに
心臓は強く、早く、鼓動を刻む。


大丈夫、イベントは純粋に楽しめる。


タイトルコールから始まって、
出演者の皆さんが続々登壇。


下手側から壮馬の姿が見えて、
改めて"遠い"と感じる。


…やっぱり、好きだなあ。


柔らかい物腰も、ふわりと揺れる前髪も、
近くで見ていた時よりも愛しくて。


胸にこみ上げてくる"好き"は、
春雷のように私の中に鳴り響いて、離れなかった。

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