限界オタクの隣人事情 [斉藤壮馬]

41　「可愛い」」 ページ41

由亜にメイク道具一式、洋服、さらにはヘアアクセまで選んでもらった。


もう親じゃん。


『これ、次のイベントに着てったら、
気づいてくれるかな』


由「いいんじゃない？可愛いし」


『ほんと？楽しみになってしまうな』


由「私もそれなりに頑張っていかなきゃな」


『ライブじゃないから、
ちゃんとお洒落していけるのいいよね』


由「わかる。私ライブ完全武装だもん。Tシャツスキニータオルペンラ。アニクラでも行くつもりかお前って感じになる」


『アニクラ行きた〜〜い』


由「それな〜〜」


私のマンションの近くに車を止め、
由亜がドアを開きながら言う。


由「じゃあA、
次会うときは倍可愛くなってろよ」


『倍はキツイです』


由「ま、頑張って。応援してる」


『ありがと、またね』


由「あーい、またねー」


由亜の車がゆったりと走り出す。


…頑張らなきゃ。


壮馬に、よく思ってもらうために。


付き合いたいわけじゃない。


それを望んでしまったら、
本当に一緒にいることが辛くなってしまう。


だから、せめて嫌われないように。


壮馬とこの関係を続けていくために。


頑張ろう。


とぼとぼ家に帰り、手を洗って、ざっとメイクを落として、人をダメにするソファに飛び込む。


可愛くなるって、大変なんだな…。


世の可愛い女性、いつもお疲れ様です。

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