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帰路の時間 ページ7

「あ、あのぉ〜……先生? 短歌、できてっけど……」


顔が段々引き攣っていくのが嫌でも分かる。それでもなるべく笑顔を作って短冊を先生に差し出すが、それを受け取った先生は「あぁ〜」と思い出したかの様な声を出しながらマッハで触手を動かし、瞬時に評価と添削をされたそれを渡される。そして緑の縞模様を浮かべたため、何故か無性に腹が立ってきた。


「もう殺せた者からって言いましたし、既に言質は取ってますよ〜。提出が一足遅かったようで、残念ですねぇ〜」


ヌルフフフフと独特的な笑い方をする先生。それにより苛立ちや寺坂達に対する怒りなど、あらゆる負の感情がふつふつと込み上げてきた。


「……ふっ、ざけンなぁ!!!!」


感情のまま勢いよくナイフを先生にぶん投げれば、案の定と言うべきか片や表札を、片や私の手を手入れし、少しボロボロだった手は綺麗になっていた。いや何故手を。


「殺せない……先生……あ、名前。『殺せんせー』は?」


今日はおろか、明日も、明後日も、この先生─殺せんせーは殺せないだろう。

始業のベルは、明日も鳴る。


*


「さっきはごめんね、五条さん」


流石に下校時刻を過ぎると解散を言い渡され、寺坂達にそれぞれ一発拳をお見舞いしてやってから帰路についていると、一緒に帰ってる渚に突然そう言われた。例の暗殺のことかと察した私は、渚の頭をわしゃわしゃと撫でて頭を下げるのを阻止する。


「あの暗殺は大方寺坂に言われてやったンだろ? それだとむしろ渚も被害者の方だし、お前が謝ることはねぇよ。私はこの通り無傷だから、つかあれくらいなら耐えれる自信はあるな!」

「どこから出てくるのその自信は!?」

「というか火薬に耐えれるってどういうことなの!?」


自信満々に言えば渚と茅野に勢いよくツッコまれる。杉野は前から私の頑丈さを知っているからか、呆れたようなため息をつく。何でだ。


「ま、殺せんせーも言ったけど、渚はもっと自分を大事にしな。脱皮が無かったらお前は間違いなく大怪我してたンだから」

「あたっ! ……うん、ごめんなさい」


軽くデコピンお見舞いして、渚がそう言うともう1回頭を撫でてやる。そうしたら「あんまり撫でないで」と顔を少し赤らめてやんわりと止めさせられる。何でこんな可愛いンだよこいつ。


「渚……女の私より可愛いってどういうことだよ。今地味にキュンときたぞ」

「いや、僕に聞かれても……ってどこに!? 何で!?」

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作者名:水原 紫歩 | 作成日時:2019年7月8日 21時

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