ド怒りの時間 ページ5
5時間目、国語の時間。
「お題に沿って短歌を作ってみましょう、ラスト7文字を『触手なりけり』で締めて下さい」
「……触手って季語なンか?」
独り言のつもりで呟いたのだが、「さぁな」と隣から寺坂が返してきた。まさか寺坂が私の独り言に反応するとは思ってもいなくて、思わず寺坂の方を見やると、心なしか少し機嫌が良さそうに見える。私の視線に気付くと「ンだよ」とジト目で聞いてきたため、「何でもねェ」と返して、目の前の課題に視線を戻す。
その時茅野が先生の名前を聞いていたが、どういう訳か頭が冴えていた私はそれを一切気にせずペンをスラスラと進め、あっという間に短歌が完成した。
念の為文法とか表現の仕方に間違いがないかを見直して、先生に持って行こうと立ち上がる。
「お、もうできましたか渚君、五条さん」
先生の言葉に渚を見やる。すると渚は先生に見えないようにナイフを短冊で隠していて、殺る気かと気付いた私もまた、渚を倣いナイフを手にとる。昼飯の後、満腹感と暖かい陽気が相まって睡魔が誘われるこの頃は、恐らく先生が1番油断する時間なのだろう。
渚が先生の前に立ち、瞬時にナイフを振りかざす。が、
「言ったでしょう、もっと工夫をしま……」
受け止められてすぐ、渚は先生にふわりと抱きつく。私は渚に続いてナイフを構え突撃し、先生にめがけて振り下ろそうとした、
その瞬間だった。
─バアアァン!!!
けたましい爆発音と共に、BB弾が目の前から勢いよく飛び散る。近くにいた私も当然巻き添えを喰らい、失明だけはと思い、咄嗟に腕を盾にし目を閉じる。おい、この暗殺……
「ッしゃぁやったぜ!! 100億いただきィ!!」
……やっぱテメェらの差し金かよ、寺坂組。
「ちょっと寺坂、渚に何持たせたのよ!」
「あ? オモチャの手榴弾だよ。ただし火薬を使って威力を上げてる、300発の対先生弾がすげぇ速さで飛び散るように」
「っ、Aちゃん!」
理解が追い付いたのか、陽菜乃が駆け寄ってくる。目を開けて起き上がると、私はともかく渚も傷一つ負ってないことに気付いた。辺りを見回すと、謎の膜が私達2人を覆っていて、恐らくこれのお陰だろう。この膜を皆して不思議に思っていると、突然悪寒に襲われる。
「実は先生、月に1度ほど脱皮をします。脱いだ皮を爆弾に被せて威力を殺した。つまりは月イチで使える奥の手です」
天井に張り付いている先生の顔色は見るまでもない。
真っ黒の、ド怒りだ。
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作者名:水原 紫歩 | 作成日時:2019年7月8日 21時