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帰ってくると、サボり魔である万里くんはゲームをしながらゴロゴロとしていた。
お腹がちょっと見えて思わず鼻血が出そうになったが必死に堪えた。
「ただいま帰りました万里くん愛しています」
「きもい」
ゲーム画面から目を離さず無表情なままぶっきらぼうに万里くんは言った。
しかしその後、小さめの声でおかえり、と言ってくれてもう倒れるかと思った。
「あ、Aちゃん帰ってたんだ。おかえり」
「ただいまです!!」
シャキッと敬礼するといづみちゃんも返してくれた。とても可愛らしい。
そういえば私はこの世界に来てから一度も自分の顔を見ていない気がする。
正直この世界でリアルに、そして忠実に私の顔が再現されていたら悲惨だ。
普通にみんなが話してくれるってことは酷い顔ではないと思っているのだけど。
コンパクトはこの世界にいるときは時計と化しているので鏡として使えない。
近くに自分の姿が見られるものがないか探すと、窓があったのでみんなに不思議に思われない程度に覗き込んだ。
見ると、監督さんと似たような見た目だが現実の私の要素として茶髪では無く黒髪だし、目尻の当たりが少し釣り上がっていて目立って監督さんが綺麗な平行二重なのに対し私は奥二重。唇だって少し厚めだ。
もう少し元の顔が良ければ監督さんみたく可愛くなったのかな、なんて考えているのも束の間で、この世界に来ているだけ幸せだろうと自分を納得させた。
そんなことを思ったとき、手をつけていない宿題を思い出して背中に汗が伝った。別に成績は悪くないが凄い良いわけでもなかった。
トリップするとき一緒に持ってきた鞄から嫌々ノートをワークを取り出すと、監督さんが宿題?と聞いてきた。
「そうなんですよ。いやぁ本当に辛い」
「ンなもん簡単だろ。余裕っしょ」
寝転がったままの万里くんが言った。
万里くんにとっては簡単かもね。うん。
「私は、さ。別に万里くんみたいに出来る人じゃないからね。凡人だから」
少し落ち込んだような声のトーンになってしまって万里くんの瞳には驚きの色が見えた――ような気がしていた。
「ま、わかんない所あったらちょっとぐらいなら教えてやるよ」
さっき言ったことのお詫びとでも言うように万里くんは付け足した。
「え、本当に?」
思わず声が漏れて、おう、と返されれば幸せな気持ちになった。
「じゃあ分からないので早くこっち来てください」
「絶対わかってるだろ」
私と万里くんは顔を見合わせて笑った。
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めぇたそ*(プロフ) - とても素敵でおもしろい作品でした!万里推しじゃないのに心奪われました。他の作品作りも頑張ってください!因みに質問ですが、そのコンパクト、どこにあります?やっぱりアニメイドらへんにありますかね?() (2019年9月26日 17時) (レス) id: 7e044f69cb (このIDを非表示/違反報告)
柚子(プロフ) - ゆにさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!楽しんでいただけたようでしたら何よりです(^^)他の作品もぜひよろしくお願いします! (2018年5月26日 22時) (レス) id: 1681e727f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - とても素敵な作品で、楽しく読ませていただきました!後半では思わず涙が溢れてしまいました(´;ω;`) (2018年5月26日 0時) (レス) id: 6d746fddb3 (このIDを非表示/違反報告)
柚子は多忙で更新停止中(プロフ) - りるはさん» ありがとうございます!そう仰って頂けるととても嬉しいです。他の作品も是非よろしくお願いします。 (2017年12月27日 12時) (レス) id: 0f9b565f22 (このIDを非表示/違反報告)
りるは - 素敵な作品ありがとうございました!!とても面白かったです。 (2017年12月27日 11時) (レス) id: aa91e6f5aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子 | 作成日時:2017年5月18日 21時