【A3!】オタク少女はシンデレラ【トリップ】

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演劇コンテストが終わる寸前、至さんに連れられてデパートの屋上に来ていた。
床はコンクリートで周りにフェンスがあるだけの殺風景な場所だが、周りを見渡せばお祭り気分のビロード町が見えて良い気分になる。

「ここ、花火が良く見えるらしいよ。俺達は演劇コンテストの賞品の特等席貰えるわけじゃないから、せめてね」
「たしかにここなら良く見えそうですね……!!」
「じゃ俺、ジュース買ってくるから。さっきの焼きそばの代わりじゃないけどね。ここで待ってて」

時刻は既に20時23分で、花火が始まるのは30分からなのでコンテストが終わると直後すぐその場所で見れる、という感じらしい。
私はぼんやりと至さんを待っていると、後ろから足音が聞こえた。

「至さーん、遅いですよー」
そう言って振り返ると、思わず息を呑んでしまった。
「万里く、なんでここに……」

そこには、ジュースを手に持った万里くんが立っていた。
「ほれ、ジュース」
「し、質問に答えてください」

何も感じていないかのように万里くんはジュースを渡してきた。有難いけど、今はそれ求めてない……!!

「また、至さんに助けられちまったんだよ」
その一言で、至さんが上手くこうなるように仕向けたのが分かった。
「ほんと、私達は駄目ですね」
私は涙で潤んだままの目のふちを指で撫でた。万里くんに泣き顔は見せられない。
するとその手を万里くんが勢いよく引いた。
勢いに身を預けると私の体は万里くんに強く抱き締められていた。

「万里くん!?ギブギブ!!」
「っるせぇ!!プロレスか!!ほんと、こんなときまで色気ねぇなストーカークソ野郎」
「万里くんこそ、そのあだ名色気もクソもないですよ!!」

なんていうアホみたいな会話を繰り広げているが、私の心臓は破裂寸前だ。万里くんが離してくれる様子もない。

「この前は悪かった。わざと傷つけるつもりじゃなかったっつぅか……あんな風に言うとか、自分でも吃驚して」
「……知ってます」
「……は」

私は嬉しさと興奮で勢いで言ってしまった。

「万里くんのこと、ずっと見てきました。優しい万里くんだから、あんなの本心じゃないって、分かりきってます。どんだけ万里くんのこと好きだと思ってるんですか」

すると万里くんは大きくため息をついた。

「先に言われた、くっそ」
「万里くん、今なんて……」
ボソボソと話しているので聞き取れなかったが、聞き返すより先に万里くんが喋った。

「……A」
その瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。

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