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「あれぇ、泣いてんの?ビビらせちゃった?ごめんねぇ」

嫌だ。嫌だ。怖い。
万里くん……!!
万里くんにヒーローみたいに助けて欲しい。
ただ、来ないことは分かりきっていたので逃げることを決意した。

「うあー!!」
「うを、なんだよ」
「ちょっとお花を摘みに行きたくなりました!!さよなら!!」

凄い無理矢理なことを言って逃げ出した。
この場を、冗談めかして乗り切らないと私は恐怖で倒れ込みそうだった。
女子力がないとみたのか、そのナンパ男2人は追いかけて来なかった。

急に力が抜けて、膝が笑っている。
膝どころか足全体、いや、体全体が震えている。

「おー、遅かったじゃねぇか」

万里くんが、いる。
この上ない安心感を覚えて、私はその場にへたり込んだ。

「おい!?どうした!?」
「な、なんでもないですー!!」

しかし声はどんどん熱を帯びて、泣いていた。
万里くんは呆れた顔をして、私の腕を引っ張った。

「万里くん……?」
「今更映画で泣いてる訳じゃないんだろ?」

万里くんの優しさが身に染みた。
今すぐ抱きつきたいくらいだったが、嫌われたくないから抑えておこう――。

人気のない場所に来た。
映画館のあったショッピングモールの中ではあるが、こんな所あったのかと見落としそうなスペース。

「何が、あったんだ」

何となく、言いたくなかった。
ナンパされた、なんて言って万里くんにどう思われるか分からなかったからだ。

「……なんにもないです」

バレバレの嘘だった。万里くんは嫌そうな顔をしていた。

「俺、そんなに信用出来ないかよ」
「ち、ちが……!!」

言葉が詰まってしまった。
信用していない、というか、話したくないというか……。
なんと言えばいいか分からなくて、何も言えなくなった。

すると万里くんは私の胸元に拳を突きつけた。
そして、手を開くと1枚の紙がはらりと落ちた。
―夏祭りの広告。
「お前のこと、誘おうと思ったんだけどな、やめた」

何で、わざわざ目の前で言うの。
言ってはいけないと、胸がざわつくのを感じた。けど、言わずにはいられなかった。
だって、万里くんが分からない。
少しくらい好意を向けてもらえた、優しくしてもらえたと思ったら、目の前でこんな……。

「万里くんは、私が迷惑だと思いますか」
「……は」
思いが止まらない。
「もしも嫌いなら、迷惑なら、優しくするのはやめてください……!!

好きだから、もしそう思われてるなら優しくされるのは辛いだけです!!」

私はその場から逃げ出した。

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めぇたそ*(プロフ) - とても素敵でおもしろい作品でした!万里推しじゃないのに心奪われました。他の作品作りも頑張ってください!因みに質問ですが、そのコンパクト、どこにあります?やっぱりアニメイドらへんにありますかね?() (2019年9月26日 17時) (レス) id: 7e044f69cb (このIDを非表示/違反報告)
柚子(プロフ) - ゆにさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!楽しんでいただけたようでしたら何よりです(^^)他の作品もぜひよろしくお願いします! (2018年5月26日 22時) (レス) id: 1681e727f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - とても素敵な作品で、楽しく読ませていただきました!後半では思わず涙が溢れてしまいました(´;ω;`) (2018年5月26日 0時) (レス) id: 6d746fddb3 (このIDを非表示/違反報告)
柚子は多忙で更新停止中(プロフ) - りるはさん» ありがとうございます!そう仰って頂けるととても嬉しいです。他の作品も是非よろしくお願いします。 (2017年12月27日 12時) (レス) id: 0f9b565f22 (このIDを非表示/違反報告)
りるは - 素敵な作品ありがとうございました!!とても面白かったです。 (2017年12月27日 11時) (レス) id: aa91e6f5aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚子 | 作成日時:2017年5月18日 21時

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