*22 ページ22
「ぐすっぶえっぐひっ」
「泣き方何とかしろよ……」
映画を観終えて感動したようでストーカーはずっと泣いていた。勿論、泣き方に可愛げなどは一切ない。
「だって、だって!!」
「分かったから、ちょっと静かにしろ!!」
今はマグロナルドで軽食でも、ということでシェイクとポテトを食べていたのだが泣きすぎてこのザマである。
周りの人から変な視線で見られて、俺が悪いみたいじゃんか。クソッ。
「あらあら、彼女さん泣かしちゃ駄目よ」
お年寄り夫婦のお婆さんの方が俺に話しかけてきた。
だから俺のせいじゃない、っていうか……
「彼女ですって!!万里くん!!ばん……」
「彼女じゃないです、こいつ。映画観て感動しすぎたみたいで」
涙を一気に引っ込ませてストーカーは嬉しそうな表情で言った。名前を呼ばれたのでそれを遮るように答えた。
すると2人は楽しそうに笑った。
「随分仲が良いんだね。まぁ彼女じゃなくても女の子は泣かせない方が良いぞ、坊主」
お爺さんの方は満足げにそう言うとお婆さんと手を繋いで何処かへ行ってしまった。
「あの2人も、仲良いんですねぇ。愛し合ってるというか……」
「2人もって……も、ってなんだよ。俺らは別に仲良くないだろ」
ストーカーはへへ、と笑うとそうですね、と言った。
なんか、幸せそうな顔してるな……全く。
* * *
片付けるため席を立つと、後ろから声を掛けられた。
「ねぇ、さっきめっちゃ泣いてたよね」
「み、見てました……?お恥ずかしい……」
率直な感想を述べると話しかけてきた男2人は笑った。何がおかしいんだろう。
「いやいや、可愛かったよ」
急に可愛いとか言われると、戸惑うんですけど。
「あんな泣かせるような奴じゃなくて、俺達と遊びに行かない?」
これってナンパってやつ?人生で初めてなんだけど。しかも初めてが2次元とか。
「こんな不細工な奴じゃなくて、他の人と遊びに行かないんですか?」
なるべくナンパ男達と同じような言葉を使って返した。これで腹を立ててどっか行ってくれないかな……と思っていると寧ろ乗っかってきてしまった。
「そんなことないよー、君がいいなぁ」
「私、他に待たせてる人がいまして……」
背中に冷や汗が伝った。怖がってしまっているのが嫌でも分かる。
こんなとき、少女漫画みたいに万里くんが助けてくれたら。
そんな風に思っても、きっと万里くんは来ない。だって私は少女漫画のヒロインみたいに可愛くないから。
ふと、涙が零れ落ちた。
178人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「トリップ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めぇたそ*(プロフ) - とても素敵でおもしろい作品でした!万里推しじゃないのに心奪われました。他の作品作りも頑張ってください!因みに質問ですが、そのコンパクト、どこにあります?やっぱりアニメイドらへんにありますかね?() (2019年9月26日 17時) (レス) id: 7e044f69cb (このIDを非表示/違反報告)
柚子(プロフ) - ゆにさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!楽しんでいただけたようでしたら何よりです(^^)他の作品もぜひよろしくお願いします! (2018年5月26日 22時) (レス) id: 1681e727f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - とても素敵な作品で、楽しく読ませていただきました!後半では思わず涙が溢れてしまいました(´;ω;`) (2018年5月26日 0時) (レス) id: 6d746fddb3 (このIDを非表示/違反報告)
柚子は多忙で更新停止中(プロフ) - りるはさん» ありがとうございます!そう仰って頂けるととても嬉しいです。他の作品も是非よろしくお願いします。 (2017年12月27日 12時) (レス) id: 0f9b565f22 (このIDを非表示/違反報告)
りるは - 素敵な作品ありがとうございました!!とても面白かったです。 (2017年12月27日 11時) (レス) id: aa91e6f5aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柚子 | 作成日時:2017年5月18日 21時