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「んん、何で蜂蜜?」
俺はストーカーに蜂蜜を差し出した。
風邪の時は蜂蜜も良いと聞くから、丁度切らしていたみたいなので買ったのだ。
「蜂蜜が良いってよく言うだろ。ほら」
「そのまま!?」
流石に甘すぎる、と文句を言うので俺はキッチンからスプーンを持ってきた。
買って来たのに文句しかないなら無理矢理でも舐めさせてやる。
「はい、あーん」
満面の笑みでスプーンを近付けると顔を真っ赤にした。
――正直、意外だった。
喜んでパクッとスプーンを咥えるかと思ってたのに、恥ずかしがっている。
「なんだよ、自分はこーゆーのしたがる癖にやられるのは恥ずかしいってか?」
「無理です!!するのとやられるのは別物です!!」
首をぶんぶん振り続けるところを見る限り、相当照れている。珍しい。
「たまには良いんじゃねぇの。ほら、あーん」
もう一回スプーンを近付けると一瞬躊躇った後パクリとスプーンを咥えた。
「甘い」
「感想それかよ」
短すぎる感想に、思わず笑ってしまった。
「甘いのは、万里くんのせいです」
ボソボソと喋るので確信は持てなかったが今言ったことは何となく分かった。
――俺のせいって、どういう意味で……?
「今、なんて……」
聞き返すと、返ってきたのは女子らしからぬひっどい鼾だった。
「ほんと、色気ねぇなお前」
何となく馬鹿らしくなって、寝ているストーカーの頭をぐしゃりと撫でた。すると、寝ながらそれに気付いたかのようにストーカーは俺の体に手を回した。
「えへへ、万里くん……」
いつの間にか口元が緩んでいる自分に気が付かなかった。
――後に、盗撮した至さんから見せられて全力で叫んだのである。
* * *
「柊A、完全復活!!」
と言うと、おめー、何ていう至さんの気の抜けた返事が返ってきた。
「これでまた万里くんに愛を伝えることが出来ますね」
「いつだって伝えてる癖に何言ってんだ」
万里くんは無表情で言った。
「まぁ、そこは置いといて……今は愛じゃなくて感謝を伝えさせてください。看病してくれてありがとうございます。迷惑かけてすみません」
私は深々と礼をした。迷惑だけはかけたくなかったのに、風邪のせいでほとんど記憶が吹っ飛んでいるのだ。覚えているのは、万里くんが謝ってくれたことくらい。
ずっと頭を下げていると、頭に割と容赦ない手刀打がなされた。
「何するんですか!?」
「迷惑なんて考えるな」
涙目で聞くと、私の考えを覆すような言葉が投げかけられた。
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めぇたそ*(プロフ) - とても素敵でおもしろい作品でした!万里推しじゃないのに心奪われました。他の作品作りも頑張ってください!因みに質問ですが、そのコンパクト、どこにあります?やっぱりアニメイドらへんにありますかね?() (2019年9月26日 17時) (レス) id: 7e044f69cb (このIDを非表示/違反報告)
柚子(プロフ) - ゆにさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!楽しんでいただけたようでしたら何よりです(^^)他の作品もぜひよろしくお願いします! (2018年5月26日 22時) (レス) id: 1681e727f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - とても素敵な作品で、楽しく読ませていただきました!後半では思わず涙が溢れてしまいました(´;ω;`) (2018年5月26日 0時) (レス) id: 6d746fddb3 (このIDを非表示/違反報告)
柚子は多忙で更新停止中(プロフ) - りるはさん» ありがとうございます!そう仰って頂けるととても嬉しいです。他の作品も是非よろしくお願いします。 (2017年12月27日 12時) (レス) id: 0f9b565f22 (このIDを非表示/違反報告)
りるは - 素敵な作品ありがとうございました!!とても面白かったです。 (2017年12月27日 11時) (レス) id: aa91e6f5aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子 | 作成日時:2017年5月18日 21時