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光が段々薄くなっていくと、明らかに家ではない所にいることが分かった。
――本当に、トリップしたのだろうか。
コンパクトを確認すると鏡だった所が時刻を表していた。
リアルタイムと同じようで、最後に見た時計の数分後を示していた。
来たのは確かだ。だって周りの人々がA3!のイラストで見たまんまだった。
自分もこんな姿になっているのかと思うと正直怖いが、それもまた面白い。
しかし地図などはアプリ内で出ていないため全然何処か分からない。
どうしようかと周りを見渡すと、見覚えのある風景があった。
「ビロード駅……」
ビロード駅前って、出稼ぎの所であったような。
もしかしたらこのまま待っていれば誰かしら来るのでは、と思ったがそんな時間が無いのは明らかだった。
この世界の人に見られたら私は2次元に来られなくなるのだ。それは困る。
しょうがない。周りの人に声をかけていくか……。
「すいません、MANKAIカンパニーって知りませんか」
手当たり次第声をかける。
「……知ってるよ」
聞き覚えのある声がした。
万里くんではないけれど、確実に知っている。
「……俺の劇団に、何か用?」
――茅ヶ崎至さん、だ。
「えっと、私MANKAIカンパニーの大ファンで。折角ビロードウェイに来たなら一目見たいなって思ったんですけど……場所が分からなくて。」
「大ファンなのに場所は知らなかったんだ?」
あぁ、既に揚げ足を取られている。
でもこんな所で挫けていられない。
「私スーパー方向音痴なんです。地図なんかもうちんぷんかんぷんなんですよ」
すると至さんは笑った。
「はは、そっか。俺も仕事帰りで今から行くところだから、教えてあげる。」
何故笑われたのかは謎だがラッキー。
ありがとう。至さんをこの時間に帰してくれた会社、そして電車。
「大ファンだから、俺のこと分かるよね」
「はい!!……茅ヶ崎至さん、ですよね?」
何だか不安で声が小さくなっていく。
「そうそう。正解。君は?」
名前を聞かれている――。その事実だけで2次元に来られて良かったと感じた。
「……Aです。柊A」
名前を告げると、Aね、と呼ばれて死ぬほど嬉しかった。もう死んでいい。いや、まだ死ねない。万里くんに会っていない。自分が何言ってるかそろそろ分からない。
必死について歩いていると案外あっという間に着いた。
そして人影がふわりと見えた。
「……あ?そいつ誰っすか、至さん」
この世界で一番聞きたかった声が聞こえた。
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めぇたそ*(プロフ) - とても素敵でおもしろい作品でした!万里推しじゃないのに心奪われました。他の作品作りも頑張ってください!因みに質問ですが、そのコンパクト、どこにあります?やっぱりアニメイドらへんにありますかね?() (2019年9月26日 17時) (レス) id: 7e044f69cb (このIDを非表示/違反報告)
柚子(プロフ) - ゆにさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!楽しんでいただけたようでしたら何よりです(^^)他の作品もぜひよろしくお願いします! (2018年5月26日 22時) (レス) id: 1681e727f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - とても素敵な作品で、楽しく読ませていただきました!後半では思わず涙が溢れてしまいました(´;ω;`) (2018年5月26日 0時) (レス) id: 6d746fddb3 (このIDを非表示/違反報告)
柚子は多忙で更新停止中(プロフ) - りるはさん» ありがとうございます!そう仰って頂けるととても嬉しいです。他の作品も是非よろしくお願いします。 (2017年12月27日 12時) (レス) id: 0f9b565f22 (このIDを非表示/違反報告)
りるは - 素敵な作品ありがとうございました!!とても面白かったです。 (2017年12月27日 11時) (レス) id: aa91e6f5aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子 | 作成日時:2017年5月18日 21時