付き合えただけで奇跡だと思ってる彼女と五条先生 (ページ9)

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五条さんの浮気が発覚してから1ヶ月
決定的な何かを見たわけではないが、確実に彼のではない女性物の香水の香りが彼から漂ってくる
それもいつも決まった香り
だからと言って私は何もせず、ただ毎日を送っていた
朝は早くに仕事に出て、夜は帰ってすぐシャワーを浴び、昼間にわざと返信し忘れた五条さんのメッセージを確認する

あの子と彼が二人きりで過ごしている間も、私は仕事

どうして？なんで私だけ？？なんて思ってみたり
私は彼のお情けで彼女になれたのだから、このくらい割り切って付き合っていかないと、と前を向こうとしてみたり
忙しなく動く体に合わせて、忙しなく浮き沈みする私の感情にもう、疲れてしまった

周りはとても心配してくれて、特に五条さんの教え子の虎杖くんはまだ数回しか会ったことのない私を気にかけてくれた
だけど肝心の五条さんからは特にこれといった心配のメッセージもなく、今まで通りどこで誰と何をしたのかの写真付きメッセージのみが送られてきていた

仕事中は五条さんのことを考えずに済むので、日中は特に落ち込むことはないが、夜眠る前やシャワーを浴びている時、スーパーに買い出しに行った際、シチュールーの箱を見るたびに五条さんのことを考え出しては鉛のような何かが腹の底に溜まっていった

黒くて汚くて醜い何かが
それがなんなのか、パンドラの箱のように暴いて全てを知りたいとは思えない
むしろ、出てくる前に蓋をして閉じ込めてしまいたい
そんな思いを抱え続けるのに私はもう疲れ果ててしまったのだ

最近では五条さんからのメッセージもどこかそっけないように感じるし、きっと今はあのみなという女性に夢中なのだろう
私のことなんて気にかけられないほどに

チクッとまた胸が傷んだ気がして、すぐに気のせいだと蓋をする

この1ヶ月、逃した幸せは数え切れないほどで、その穴を塞ぐように暴飲暴食を繰り返せば、五条さんが褒めてくれた足もお腹周りもぶよぶよとしてきた

もう限界なんだ、きっと

そう思ったのと同時に、彼への想いがすっと引いていった気がした
鉛は依然として鉛のままここにあるけど、これ以上鉛を抱えれば私が沈んでいってしまう
そう思った私の心の防衛本能なんだと思う

これ以上鉛を抱えることのないよう
これ以上私の心を刺激させないよう
私は静かに心を閉ざした