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14話 ページ32

剣持くんに連れられてやってきたカラオケ店で


私はいま、大変困っている。


にっこにこの剣持くんがこちらをを見ている。

いや、見られていたら歌いづらいし、そもそも歌いたくないんだって!!!

さすがに喋る時は声を作れても、歌うとなる怪しい。

そもそも声を作りながら歌ったことなんて皆無だ。


「あの、歌わなきゃ...だめ?」

「せっかくですから、一曲歌いましょうよ!」

期待に満ちた瞳で見つめられてうっ、とたじろぐ。


「私、本当にうまくないから..!!」

「そんなの気にしないって言ってるじゃないですか」

絶対に引かない剣持くんと私の攻防戦が続く。

「そんなに歌いたくないですか?」

眉を落としてこちらを見る剣持くんの表情が、私の心に訴えかけてくる。


そんな可愛い顔で残念そうにしないで欲しい..。

だって、歌ったら身バレしちゃうし...。
もし、剣持くんにバレて嫌われてしまったら...そんなのヤダ!

ここは、一か八かで声を作ってやるしかない。

やってみるしかない!

意を決して端末を手にとって操作する。

そんな私の様子を見て、今度は嬉しそうな顔を浮かべる剣持くん。


無難なメジャー曲を選んで送信を押す。

テレビ画面に表示され、音楽が部屋全体に響きわたる。

剣持くんはちらりと私を見た後、テレビ画面へと体ごと向けた。


歌ってるところを見られるのはさすがに気まずかったので、小さく安堵のため息を溢した。







音楽が止まり、画面には消費カロリーが表示される。

なんとか歌いきったが、剣持くんの反応を確認するのが怖い。

手元のマイクを見つめながらどうしたものかと思案する。

「Aさん」と剣持くんが声をかける。

ビクッと肩を跳ねさせた私は、恐る恐る剣持くんへと視線を向ける。


「あの、全然音痴じゃなかったんでそんなに気にしなくていいと思いますよ!それに、僕はそんな無粋な事言う男じゃないですよ」

剣持くんなりの優しさでフォローしてくれる。私が音痴だからと誤魔化したから...。


剣持くんの優しさに触れる度に、罪悪感に責められる。

こんなにも、優しい彼にこれ以上隠し事を続けたくない。ありのままの私を見て欲しい。

心に一度広がったその欲は、波紋のように広がっていく。

「あの、剣持くん...。もう一曲歌っても、いいかな?」

マイクを持つ手に力が籠る。

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作品ジャンル:恋愛
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おすし(プロフ) - ココアさん» ココア様、ありがとうございます✨また次回作や番外編でお会い出来ますように…♡ (2022年7月25日 10時) (レス) id: f18e2ac31d (このIDを非表示/違反報告)
ココア - 完結おめでとうございます!!お疲れ様でした! (2022年7月24日 23時) (レス) @page41 id: 23123a7f78 (このIDを非表示/違反報告)
おすし(プロフ) - 後藤絵里さん» (はっ…!ありがとうございます!!)(ひっそりと修正しました!ありがとうございます!!) (2022年7月24日 18時) (レス) id: f18e2ac31d (このIDを非表示/違反報告)
おすし(プロフ) - アクシエイドさん» アクシエイド様、素敵なコメントありがとうございます!無事に完結出来て安心しております。また機会がありましたら、お会い出来ますように…♡ (2022年7月24日 18時) (レス) id: f18e2ac31d (このIDを非表示/違反報告)
後藤絵里(プロフ) - (最後の方の、「一緒にいれますように」が「一緒に入れますように」になってますよー…(^-^)/) (2022年7月24日 18時) (レス) @page41 id: 1a5db0f276 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おすし | 作成日時:2022年7月3日 23時

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