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集団から少し距離を置いて歩いていると
右肩をずいっと後ろに引っ張られた
びっくりして後ろを振り返ると
「りょうくん…」
「大丈夫?様子おかしくない?」
「なんでいるの?」
「車で通りかかって、心配になったから」
その温かい言葉に冷たく凝り固まった私の中の何かは一気に溶け出して気づけば涙を流していた
「帰ろう?」
手を引かれてそのままみんなとは逆の方向に引っ張られる
「あれ、A〜?」
遠くで私を呼ぶ声が聞こえる
けどそんな声を無視してひたすらりょうくんに引かれるがまま、その場を離れていった
「ここ、俺の家だから上がって」
気づけば大きな家の前まで歩いてきていて、りょうくんの家に上がっていた
家の中の客間の綺麗な和室に通される
涙を止めようと必死に下を向いていると目の前に温かいお茶を差し出され、横にりょうくんが座っていた
「どうしたの?」
優しく聞いてくれるその声は心地がいい
溢れる涙を頑張ってせき止めながらポツリポツリとさっきの出来事を話した
「…そっかぁ」
「世界にたった1人、取り残された気がした。」
「それはないなぁ、俺は絶対Aのそばにいるよ」
それに、と
「俺に周りにはそういう人ばかりじゃないって教えてくれたのAでしょ、だから辛いときには今度は俺がAを助けるよ」
と言われる
私の記憶の中ではりょうくんを助けたことなんてなかった。
出会って2ヶ月近くになるけど今までりょうくんが私に弱さを見せるところなんてひと場面もなかったはず
「え…?」
そう聞き返すと
「もう、覚えてないよね」
そう笑って返された
「お茶飲んで、てつや心配するから早く帰ろう?送るから」
そう言って部屋を一旦立ち去るりょうくん
一体、私は彼に何をしたんだろうか
でもりょうくんの言葉には一つ一つ暖かさとか、包容力があって、私は「有名な写真家」ではなく「佐藤 A」という存在をさっきより認められる気がした
帰りの車中でも、さっきの「私がりょうくんにしたこと」が気になって何度も聞こうか迷ったけれど、なんだか図々しい気がして自然と自分で思い出すまで聞かないことにしよう、と心に決めた。
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渚(プロフ) - 「」の前に名前つけてくれると読みやすいです!お話はすごくよくて大好きです!東海オンエアも、もっと好きになりました!! (2018年4月26日 12時) (レス) id: b9e4ac9f31 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - とても面白いです(⊃-^)ホロリン こんなに話も文も書けるとか本当にすごいです。(T_T) (2018年2月26日 18時) (レス) id: 79b287e614 (このIDを非表示/違反報告)
oss.2(プロフ) - さこさん» こんばんは、返信が遅れてしまい申し訳ありません(;_;) コメントありがとうございます。どうしても主人公を3人すべてと結ばせたかったので無理やりそうしてしまいました(;_;)ありがとうございます、更新頑張ります (2017年8月21日 22時) (レス) id: e9a15ad6af (このIDを非表示/違反報告)
さこ(プロフ) - こんばんは☆誰落ちになるんだろう…///とドキドキしながら、拝見してましたが…まさかの3パターン落ちになるとは…(*≧∀≦*)これからも更新楽しみにしてます☆ (2017年8月20日 21時) (レス) id: 8ba320eacd (このIDを非表示/違反報告)
oss.2(プロフ) - さこさん» コメントありがとうございます。こんな駄作・駄文を読んでいただいているなんて本当に感謝感激です。なるべく更新頻度は崩さないように頑張りますのでよろしくお願いします(;o;) (2017年8月15日 15時) (レス) id: e9a15ad6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:oss_2 | 作成日時:2017年8月12日 2時