こちとら日本の魔法使いよ (ページ3)

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狐だ。父親はふと疑問に思った。
－何故こんな所に狐が？－もっとよく見ようと目を凝らすと、確かに向かい側の建物の戸口に狐が1匹此方を見ている。きっとあそこの家のペットだろう。父親は思い直し狐をもう一度見た。狐は見つめ返した。暖簾を掛け、霧で暗い為提燈をつけたとき、硝子戸越しに映っている狐が見えた。毛繕いをしている。父親はどこか安心し店に戻った。

仕事をしているうちに父親の頭はあと4週間後にある祭用のお面でいっぱいになった。しかし、朝日が昇り周りも店が開き始めた頃、またもや可笑しなことが起きた。客が多い。いやそれだけならまだいい、その客の殆どが着物を着ているのだ。こんな時代に着物を着ている人は少ない。ましてや今日は着物を着るほど目出度い事は無い。

－自分達が知らないだけだろう。なんせ、皆正月と誕生日が一度に来たような顔をして買っていったんだから－
嬉しそうでなによりだと微笑みながら品を渡すがやはり気になるものは気になる。
「ちょっと気になるんですけどね。今日は着物を着た人が多いもんでなんか目出度い事でもあるんですか？」
「おや、知らないんかい？『例のあの人』が消えたんだとよ。これ程、嬉しい事は無いさ。お面貰ってくよ。」
そう言って男性は翁の面をつけ、鼈甲飴を食べながら、カランコロンと下駄を鳴らしながら行ってしまった。
－『例のあの人』って誰だ？－

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