□嵐 ページ39
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「……うわぁ……」
外を見るとものすごい風が吹き荒れている。
私は部屋でスーツを着たまま窓から外を見ながら立ち尽くすしかない。つけっぱなしのテレビからは「季節外れの台風21号が…」とかなんとか言っている。
まあ一応暴風圏に入ってはいないので普通に仕事はあるわけで。
私は靴を履くと意を決して外へ出た。
「……風やば!!」
飛ばされないように一歩一歩踏みしめながらアパートの階段を降りてバス停へ向かう。
せっかくセットした髪の毛も、ぼさぼさに乱れ放題だ。
「……あ、一松くん」
「……」
丁度松野さん家の前を通りかかった時、すごい勢いで玄関から飛び出してきたのは一松くん。
私が声をかけると、「あ?」と睨まれた。
「……どうしたの、こんな朝から。しかもこんな大荒れの日に外出るなんて…」
「……別に、あんたには関係ない」
「そっかー」
そっけなくそっぽを向いた一松くんの腕の中には、猫がこっちを見上げて抱かれている。少し憎たらしい顔をした猫だけど、まあまあ可愛い。
「一松くん、風強いから気をつけてね」と軽く手を振ってバス停へまた歩き出すと、「あんたがね」と冷静に返された。
たしかにこれは……会社にたどり着けるんだろうか。
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「…………やばいですよ井矢見さん」
結局会社にはどうにか間に合って、1日の仕事もやってくる人が少なかったので簡単に終わらせた。
私が職場の窓から外を見ると、風に加えて雨まで降ってくる始末。
私は青い顔で井矢見さんを見ると「お疲れザーンス」と私をスルーして去っていった。
「待って!待ってください!井矢見さん!」
「ナンザンショ」
「私を家まで車で送ってくれるなんてそんな優しさは……」
「残念ながらゼロザンスね」
「うそぉー!」
この大荒れの中1人で自力で帰ろうなんて無理がある。
私は必死で「お願いします!井矢見さん!!」と頼み込む。
「足長いし髪サラサラだし!よっ!日本一!いや、おフランス1!」
「………平野、お前わかってきたザンスね」
「歯がまぶしくすぎて見えないぐらいです!かっこいい!」
「なーはっはっはっ!よし!さっさと帰る準備するざんすよーん!」
(ちょろい)
私は1人でガッツポーズをすると急いで帰る用意をして井矢見さんの車の助手席に乗り込んだ。
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