チビデカちゃんのDOUTEI喪失日記

Diary 6 ページ24

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「ねえ、この前ついに逮捕されたらしいわよ」

「え？誰が？」

「伝説の変態じーさんよ！」

「え！？本当に？っていうか、本当にいたんだ……それって都市伝説なのかと思ってたんだよね」




＊ ＊ ＊





それは、今から3日ほど前のこと。



俺が給湯室に入ろうとすると、中から声が聞こえてきた。やれやれ、また噂好きの女どもか……



彼女達が話している“伝説の変態じーさん”とは、里見が逮捕した、都市伝説となっている”ジャーニー東山”の事だ。


桜中央署に取調室は二部屋ある。デスク以外には何もない殺風景な部屋で、デスクを向かい合わせに二つも置けば一杯になってしまうような小さい部屋だった。


机の上には、担当の刑事が持ち込んだファイルなどの資料とノートパソコン、そして供述調書をプリントアウトするためのプリンターが置いてある。


刑事ドラマで定番となっているライトは実際の取調室にはないし、マジックミラーになっている鏡もない。


取調室で強引な取調べが行われることが問題になったことから、その防止策として取調べ中、取調室のドアは開けておくことになった。取調べの可視化というわけだ。


とはいえ、丸見えにならないように、取調べ中は開いたドアの前にパーテションなどを立てて、声は筒抜けでも中の被疑者の顔は見えないという状態にされていた。





その日俺は、取調室に向かうジャーニー東山に廊下で偶然出くわした。


サングラスに黒いキャップ、ブカブカのＴシャツ。キャップにはＢＡＤと書かれている。伝説通りの風貌に、彼を見ずにはいられない


じろじろ見ていたのも悪かったのかもしれないが、「ＹＯＵ、可愛いね」そう言いながらジャーニー東山は、俺の前でいきなり立ち止まった。



「あるよ？」


手錠を付けたまま、手をポケットの中に入れると、何かを取り出して俺に渡してきた。


なっ、なんだ！？


差し出され、反射的に受け取る。



「……？」

「ＹＯＵ、可愛いからあげるよ」



それは乾燥したホタテだった。まあ、酒のつまみみたいな物だ。


廊下ですれ違いざまに、話しかけられるとは思わなかったので正直驚いた。






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